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営業戦略を再構築!STP分析とは?B2B商談創出につなげる顧客分析の基礎知識 その4

作成者: CRH|Aug 25, 2025 6:49:04 AM

自社が勝てる市場はどこ?STP分析で営業戦略を再構築

「自社が本当に勝てる市場はどこか?」

顧客となりうるターゲットの定め方やアプローチ方法を、営業パーソンの勘や経験に頼っていませんか?現代のB2B営業の現場では、担当者個人のスキルに依存する属人化が、成果を阻む大きな壁となっています。

現代のB2B営業において、限られたリソースで効率的に商談を生み出すためには、STP分析という強力なフレームワークを用いて、「自社が勝てる市場」をデータに基づいて明確にする戦略が不可欠です。
そして、戦略立案後はCRMなどのデータに基づいて、客観的に評価して次のアクションに繋げることが重要です。

本記事では、STP分析の基本から、HubSpotを活用した実践方法、そして商談創出への貢献メカニズムまで解説します。
営業戦略をデータドリブンに再構築したいとお考えの方は、ぜひご一読ください。

STP分析とは?

STP分析とは、一言でいうと「市場を細分化して、狙うべき市場を決め、自社の立ち位置を明確にする」ためのマーケティングにおけるフレームワークです。

具体的には、以下の要素で構成されています。

  • S(Segmentation/セグメンテーション):どんな市場があるのか、ニーズを見極めて市場を細かく分ける
  • T(Targeting/ターゲティング):細分化した市場の中から、どこを狙うかを決める
  • P(Positioning/ポジショニング):狙った市場で、どう差別化して顧客に選ばれるかを考える

B2B営業において、STP分析で立ち位置を明確にした後は、CRMに蓄積された顧客データを活用して、戦略に基づくアクションが市場で機能しているか継続的に検証することが大切です。

S(Segmentation/セグメンテーション)

「セグメンテーション」は、市場全体を、顧客のニーズや特性に基づいて細分化するプロセスです。
まずは以下のような4つの変数を用いて市場を細かく分け、共通する傾向を持つ市場(顧客グループ)を洗い出します。

変数の分類 説明
ジオグラフィック(地理的変数) 国や都市、地域、人口密度、気候など地理的な変数で分類する。
住んでいる地域の特徴や文化、行動範囲に応じてニーズを可視化する。
デモグラフィック(人口統計的変数) 年齢、性別、家族構成、職業、収入などの人口の統計的な変数をもとに分類する。どんな人がどんな商品やサービスを利用しているかを分析。
サイコグラフィック(心理的変数) 価値観、ライフスタイル、興味・関心、性格など心理的な変数で分類する手法。ターゲットの心理や特徴を分析することでマーケティングに役立てる。
ビヘイビアル(行動変数) 購買心理や購買契機などの行動に関する特性をベースに分類する。顧客の行動を追跡し、どういうパターンや経路を辿れば購買に繋がるのか分析に役立てる。

これらの変数を組み合わせることで、市場を細かく分類します。
セグメンテーションの本質は顧客を単一の切り口で見るのではなく、多角的な視点で深く理解することにあります。
市場を分類した後は、「4Rの原則」に基づいて各セグメントの有効性を分析します。

4Rの原則

説明

Rank(優先度)

セグメンテーションで区分されたものに対して、自社の営業戦略やマーケティング戦略に沿って優先順位付けができているか。

Realistic(有効性)

母数が少なすぎると市場として適切ではないので、実際に売上や利益が見込める市場規模があるのか見極める。

Reach(到達可能性)

自社の製品やサービス、広告メッセージなどがターゲットに適切に届けられているか。

Response(測定可能性)

ターゲットとなる市場の規模や特徴を測定できるか。マーケティング施策に対しての効果(成果や反応)を測定できるのか。

ターゲットとなりそうな市場があったとしても、「Rの原則」で挙げた要素を満たしていないと、マーケティング戦略の適切な実行と売上アップは実現しません。これらの原則をクリアしたセグメントこそが、次のステップである「ターゲティング」の土台となり、営業戦略を成功に導く鍵となります。

T(Targeting/ターゲティング)

「ターゲティング」は細分化した市場から自社の狙うべき市場を定めることを指します。
自社の製品やサービスの強みや特徴を活かせる市場はどこなのか、また狙いを定めたとして他社との優位性があるか、といった視点を持ってターゲティングすることが重要です。その際には以下の3つのマーケティング手法を用います。

パターン 説明 B2B営業における活用イメージ例

差別型マーケティング

複数セグメントに対して、ニーズに対応した製品やサービスを提供する。 コンサルティング会社が「製造業」と「サービス業」で料金やサービスを出しわけて提供する。
集中型マーケティング 特定のセグメントに絞り込んで、専門性や独自性で優位に立ちシェア獲得を目指す。 承認ワークフロー系のSaaS企業が製造業の購買部門で必要とする機能に絞ってサービスを提供する。
無差別型マーケティング セグメントに関わりなく、幅広い市場に同一製品やサービスを汎用的に提供する。 企業向けメール配信システムの企業が業種や企業規模などを問わずに、配信数のみのシンプルな料金形態で訴求する。

B2Bのターゲティングでは、セグメントごとに価値提案を最適化する差別型、あるいはニッチに資源を集中する集中型が主流です。
一方で無差別型は、幅広いセグメントに対して製品やサービスに強みが明確で資金力やリソースが潤沢な大手企業が選択するケースが多いです。パターンの
択後は営業体制・パーソナライズ設計・計測指標(セグメント別CVR/LTV)を揃え、成果に応じてパターンを能動的に見直してください。

P(Positioning/ポジショニング)

「ポジショニング」とは、ターゲティングした市場に対して「競合と比べて自社がどう優れているか」を明確にして立ち位置を定めることです。
自社の製品やサービスをどのように差別化して、優位性を担保するかといった視点で分析していきましょう。
具体的には以下のようなポジショニングマップを用いて洗い出していくことが有効です。

このようなポジショニングマップを作成することで、新製品やサービスを“どこに位置づけ、どのセグメントへどう攻めるか”が一目で明確になります。

なぜB2BマーケティングでSTP分析が有効なのか?

ここまでは、STP分析の基本や方法について案内しましたが、そもそもなぜ、STP分析がB2Bマーケティングの現場で有効なのでしょうか?
いまのB2B営業の現場では、関わる人や情報の入口も増え、施策を追加するだけでは狙った相手に届きにくい状況です。
だからこそ事前に「誰に・何を・どう選んでもらうか」を定めることが重要です。STPが有効である理由は次の3つに集約できます。

1.自社の強みを把握し明確化できる

まず、どの市場をターゲットにするか定めることで、顧客が求める評価軸(価格、コスト、成果までの時間、使いやすさ、サポート体制など)を固めることができます。
結果として、競合との比較で選ばれる理由が具体化し、提案資料や営業トーク、LPの見出しまで一貫したメッセージに落とし込めます。たとえば、短期で成果を求める層を狙うなら「立ち上げの速さ・運用の手間が少ない点」を、リスク低減を重視する層を狙うなら「サポート体制・導入実績・トラブル時の対応力」を前面に出す、といった形で市場選択に基づいた強みの見せ方が明確になります。

2.広告などのプロモーション戦略に活かせる

セグメントや優先度を定めることで、広告などのプロモーションの配信先・クリエイティブ・CTAをセグメント別に出し分けできます。たとえば、課題が「コスト最適化」なら費用対効果の事例と試算を、導入段階が初期検討なら基礎解説とチェックリストを、比較検討段階なら他社比較表と導入事例を提示する、といった具合です。
比較検討層なら無料相談へのCTAを設けて直接的に商談に誘導することも有効でしょう。

3.営業リソースの無駄を省き有効活用できる

どの市場や顧客層に注力するかをSTP分析で定めることで、営業の時間配分・着手順・役割分担を明確にできます。市場を絞っていることで顧客ニーズも近く、解決に向けたアプローチも体系化しやすくなるため、初回提案の軸を定めやすくなり、商談あたりの工数を抑えられます。また、優先度を定めていること顧客のランクごとにフォロー頻度(高見込みは毎週、中程度は月次、低い場合は四半期など)をあらかじめ決めて運用するだけでも、追い過ぎ・放置・担当被りといったムダを減らし、営業のリソースをいま成果につながる先に集中できます。

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STP分析が商談創出に貢献する具体的なメカニズム

1.潜在的なニーズを先読みし、新たな商談機会を創出する

STP分析は、単に既存の市場を分類するだけではありません。顧客の属性や行動データを深く分析することで、まだ顕在化していない潜在的ニーズや、今後成長する可能性のある市場を予測することができます。これにより、競合他社に先んじて、新たな商談機会を創出することが可能になります。顧客が自社の課題に気づいて顕在化する前に解決策となる商品やサービスを提示することで、競合他社が気づいておらず、アプローチが進んでいない業界への商談創出につながる可能性があります。

2.顧客の心に響く訴求メッセージで商談化率を高める

STP分析における、セグメンテーションを整理することは顧客の本質的な課題やニーズを深く理解することにつながります。
その結果、画一的な営業トークではなく、顧客一人ひとりに合わせたパーソナライズされた訴求メッセージを届けられるようになります。顧客は「自社の状況や課題を理解してくれている」と感じ、訴求するメッセージがささり信頼感を抱きやすくなります。
この信頼感が商談に対する関心を高め、「課題解決に向けて一度は話を聞いてみようか。」と考える顧客が増え、商談化率の向上に直結します。

3.営業とマーケティングの連携を強化し商談創出の確度を高める

STP分析は営業とマーケティングが共通の顧客像を共有するための共通言語としても有効です。マーケティング部門はSTP分析に基づいたターゲティングで質の高いリードを生成し、営業部門は受け取ったリードの特性を理解した上で効果的なアプローチができます。
この連携が強化されることで、リードの受け渡しがスムーズになり、顧客が抱える課題への対応もパターンとして蓄積して標準化することができます。部門連携が密になることで、見込み顧客との接触から商談化に向けての確度を高めることが可能になります。

4.データに基づき、戦略の「答え合わせ」ができる

STP分析で策定した戦略は、あくまで仮説です。この仮説が正しいかどうかを検証するために、CRMデータを活用することが有効です。たとえば、狙った市場からの商談化率は高まっているか? 営業リソースは効率的に使われているか?といった点を実際のデータで可視化することで、感覚に頼らない客観的な評価を可能にし、ネクストアクションの改善に繋がります。

STP分析を商談につなげる3ステップ

次はB2Bにおいて、STP分析を現場でどう落とし込んで商談に繋げていくべきか3つのステップをご紹介します。

商談に繋げる鍵はデータドリブンな環境構築です。
HubSpotのようなCRMを使えば…
S=セグメントの定義と更新/T=狙う層の選定と配分・接点計画の一元管理/P=差別化軸の定義と価値提案を同じ骨組みで運用でき、再現性とスピードが高まります。
また、STP分析の戦略が正しく展開されているか、想像や思い込みではなく、実際の取引データを把握した上で軌道修正も可能です。それでは、HubSpotを活用してSTP分析を商談創出につなげる3ステップを順に見ていきます。

ステップ1:顧客情報を分析し、セグメントを定義する

最初のステップは、市場をセグメントとして細分化することです。ただ単に企業規模や業種で分けるだけでなく、「自社にとって価値のある市場(顧客)」はどのような特性を持つかを掘り下げます。

HubSpotのようなCRMでは、企業の基本情報や顧客の行動履歴といった多岐にわたるデータを活用し、リストを作成できます。これにより、市場による属性や行動パターンが共通する顧客を効果的にグルーピングすることが可能です。

 
セグメンテーションの要素 HubSpotで設定するデータ例 データ元
ジオグラフィック(地理的変数) 所在地、郵便番号など 企業プロパティ、フォーム入力情報など
デモグラフィック(人口統計的変数) 従業員数、企業規模、業種など  企業プロパティ、フォーム入力情報など
サイコグラフィック(心理的変数) 課題、興味・関心(フラグ設定をしてチェックの有無で判断)
特定のWebページの閲覧履歴など
フォーム入力情報、Web閲覧トラッキングデータ、アンケート回答情報など
ビヘイビアル(行動変数) Webサイト訪問回数、資料ダウンロード、メール開封、商談履歴など 資料ダウンロード履歴、コンタクトの活動履歴、商談履歴など

💡POINT:顧客データを活用して、価値のあるセグメントを定義しよう
セグメントの定義は、顧客の行動データと属性データを組み合わせることが効果的です。例えば、「特定の業界で、なおかつ〇〇というコンテンツをダウンロードしている企業」といったセグメントをHubSpot上で作成して抽出することも有効です。
このような詳細なセグメントは、その後のターゲティングとポジショニングの精度を格段に高めます。

ステップ2:選定したターゲットをデータで評価し優先順位を定める

次に、ステップ1で定義したセグメントの中から、CRM上の実績データで評価し、A/B/Cの優先順位を定めます。HubSpotのレポート/パイプラインを使えば、セグメント別の商談指標を横並びで確認できます。

評価軸 HubSpot上のデータ例 評価するポイント
成約率 セグメントごとのMQL→SQL→受注率  受注や成約の確度が高く、効率的な営業活動が見込めるか。
顧客生涯価値(LTV) セグメントごとの平均受注額、リピート率 単発ではなく、長期的かつ安定的な売上や収益が見込めるか。
パイプライン速度(受注までのスピック様) セグメントの各ステージ滞在日数/成約までの中央値 商談から受注にかけてのスピードが速いか。検討期間が長すぎないか。
営業リソース 商談あたりの平均工数 営業リソースの投下に見合った成果が期待できるか。

優先順位の例:
基準を「成約率上位×LTV上位×速度」とし、該当セグメントをA、いずれか中位をB、低位をCと定義。Aへ配分を厚くし、B/Cは育成やナーチャリングに回します。

HubSpotのレポート機能を使えばセグメントの中で商談化率や成約率、平均受注額などを自動で計測することが可能です。
また、商談の工数についても、商談プロパティのステージ(提案中、検討中などの商談フェーズ)に滞在している時間を自動算出する機能によって割り出すことができます。

💡POINT:実際のデータに基づくターゲティングこそが最適解
HubSpotのレポートやパイプライン機能を活用すれば、特定のセグメントの商談が他のセグメントに比べて高い成約率を示しているかなどを視覚的に把握できます。データにターゲットを絞り込むことで、営業・マーケティング活動の効率を最大化し、商談創出の精度を高めることができます。

ステップ3:ターゲットに訴求する内容を明確にする

優先度の高いターゲットに対して、「何と比べ、どう良いか」を明確にし、比較軸・訴求・CTAまでを一貫させます。
これらが選ばれる理由(ポジショニング)の核になります。また、ターゲットに応じて訴求するメッセージも定めます。

ターゲット例 比較軸 主に訴求するべきこと CTAの例
コスト重視層 総コスト・費用 年間コスト〇〇%削減 カンタン費用対効果診断
リスク低減重視層 サポート・安定運用 導入後の不安を最小化 サポート体制についてミニ面談会
早期導入重視層 導入スピード・運用負荷 すぐ使えて導入や準備が少ない 10分でわかる導入可否チェックシート

💡POINT:顧客に響く訴求を絞って根拠も示しましょう
主訴求は1つに絞り、「何と比べてどう良いか」を一文で明示し、根拠となる数値や事例なども添えると説得力が増します。
LP・メール・提案書まで表現を統一し、CTAは「カンタン10分診断」など低負荷のアクションを設定しましょう。

 

まとめ:STP分析で成果につながるデータドリブンな営業組織へ
STP分析は、感覚に頼る営業から脱却し、データに基づいて「勝てる顧客と市場」を明確にするために効果的なフレームワークです。重要なことは、戦略を立てて終わりではなく、CRMに蓄積された顧客データを用いて、当初の戦略と実際の取引状況に乖離がないか検証し、継続的に改善することです。

まずは貴社の顧客データや営業リストをSTPの視点で見直し、データに基づいた「小さな一歩」から踏み出してみませんか?

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STP分析によって、データを整理し検証した結果、次のような課題に直面するケースもございます。

「ターゲットとするセグメントの商談化率が低い...」
「データに基づいた理想の顧客像は明確になったが、そのリストが手元にない...」
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