では具体的に、BtoBデジタルマーケティングをどのような戦略で推し進めていけばいいのか、について、クリエイティブホープが支援した法人向け研修企業B社の事例を基にご紹介します。より成果を出し、効率化を図るためのヒントを得られることを願っています。
B社についてご紹介します。
B社は個人に向けたBtoCビジネスで教育・研修事業で大きく成長した会社です。昨今、高まりつつある社員教育の需要に応えるべく法人向けの研修サービスを新規事業として展開をはじめました。
しかしBtoCマーケティングとBtoBマーケティングは手法も計測指標も大きく異なるもの。B社にはデジタルマーケティングどころかBtoBマーケティングのノウハウもなく、BtoBマーケティング経験を持つメンバーもいませんでした。
「どのツールを選定すればいいのか?」というご相談からお付き合いがスタートしました。
お問い合わせをいただいた当時、担当された村山さん(仮名)はマーケティングをはじめる=ツールを導入する、という意識でした。
確かにツールを用いることで業務効率ややりたい施策を実行できますが、ツールありきではマーケティングは成功しません。
どんな状態になりたいのか? 何をしたいのか? 中長期の視点でどのようなマーケティング状態になっていたいのか? といったマーケティング戦略をたててから、それに合うツールを選ぶ、という流れが定石です。
そうしないと、短期間でツールの入れ替えが発生したり、やりたい施策が実行できず成果が出ないといったことが起こりやすくなります。
私たちクリエイティブホープは、まずツール選定の前にABM(アカウントベースドマーケティング)やデジタルマーケティングのあるべき姿についてレクチャーしました。
ABMとは、取引価値の高い顧客(アカウント)を選定し、最適なアプローチを行う手法です。具体的には、ポテンシャルとステータスの2軸で顧客をランク分けし、優先度の高い「ホットリード」に対して重点的にアプローチします。これにより、マーケティング効果を最大化します。
昔から「二八(にっぱち)の法則」という、8割の売上は2割の顧客によるものだという経験則があります。この法則は、得意客を大切にすることの重要性を示していますが、ABMにおいては単純に売上が多い顧客が価値が高いと判断するわけではありません。
売上が多い顧客は「上顧客」と呼ばれることもありますが、取引部署や取引サービスが1つのみでは、仮にその取引が無くなると一気に売上が下がってしまいます。自社の多くの商品を、顧客の複数の部署と取引していて、結果として売上が多い「上顧客」がABMにおいては価値が高いと言えます。
また「最適化」を求めすぎると選別作業が大変で、1社ごとに最適な施策を実施することはB社のような状況では逆に非効率となってしまいます。
ABMはMA(マーケティングオートメーション)やSFA(営業支援システム)、CRM(顧客関係管理)といったデジタルツールの普及によって現実のものとなった手法と言えます。
次に、「あるべきデジタルマーケティング」について説明します。BtoBビジネスはBtoCに比べて買い手の検討期間が長く関係者も多いことから、一連の購買プロセスを連動して考える必要があります。
実際にB社に説明した資料をご覧ください。
ここで言う一連の流れとは、見込客の開拓から商談創出、受注までのプロセスを指します。新規リードを獲得して終わり、ではなく商談化に向けたフォローアップや商談化、受注率の向上まで含めてデジタルマーケティングなのです。
顧客の検討プロセスは細かく分けられますが、細かすぎると取り組みはじめの企業は息切れしてしまいます。そこで、大きく「認知関心」「比較検討」「導入検討」の3つのプロセスに分け、それぞれに「見込み客を集める仕組み」「見込み客をフォローする仕組み」「受注率を上げる仕組み」を構築することが重要です。
提案後、担当者である村山さん(仮)から以下のようなコメントをいただきました。
B社の大きな課題は、見込客を集める仕組みが整っていないことでした。そのためまずはWebでターゲットとなる新規見込客を獲得する受け皿となるWebサイトの構築からはじめました。名刺代わりのWebサイトにならないよう、構築にあたりまずはしっかりと「ホットリード」を定義し、そのホットリードの抱えている悩みや課題について整理し、必要な情報(コンテンツ)は何か、を洗い出すところからはじめました。
ポイントとしては、研修申し込みに至るまでのユーザーの心理変容を見える化し、どのタイミングの見込客にはどのような情報を与え、どんなアクションをしてもらいたいのか、を明示したことです。Webサイトでのアクションというと「問い合わせ」「資料請求」がすぐに頭に浮かびますが、実際にはそれだけではありません。
情報収集段階のユーザーは白書やお役立ち情報を求めていますし、その情報提供をする方法はホワイトペーパーやセミナーなど多岐に渡ります。またユーザーの抱えている課題の違いにより、訴求テーマも異なります。
これらを丁寧に整理し、見込客の課題毎に各検討プロセスで提供する情報や求めるアクション、次の検討プロセスに移行するために必要な施策をまとめ、それを実現するためのページ構成や導線設計を行い、Webサイト構築を進めました。
Webサイトの構築後、Web広告や外部メディアの活用も併用し、初年度から新規リード獲得目標をクリアすることができました。
Webサイトを構築し、見込客のを集める仕組みを整えてほっとリード獲得の体制を整えた後、私たちはマーケティング部門とインサイドセールス部門の立ち上げを支援しました。
先ほどの村山さんは、法人向け新規事業部における営業チームの一員という立場でした。マーケティングの専任スタッフは村山さん1人でしたが、マーケティング人材の採用を推進すると共に、B社内でのデジタルリテラシー向上を高めるためのインハウス研修を行いました。また、インサイドセールス部門には、営業メンバーの中からデジタルへの興味関心が高いメンバーを選別してもらい、組織化しました。もともと営業力の強い会社でしたので、インサイドセールスの必要性はすぐに理解いただけました。
マーケティング部門とインサイドセールス部門の立ち上げは、B社のデジタルマーケティングの成功にとって重要なステップでした。
上記はB社のデジタルマーケティング効果を測るKPIを分かりやすく図式化したものです。マーケティング部署とインサイドセールス部署でどのような指標を追っていたのか、についてご理解いただけるかと思います。
営業力が強く、マーケティング部署でアウトバウンドコールも実施しているのはあまり例をみないかもしれません。が、新規事業で知名度も見込客も少ない段階においては、インバウンドとアウトバウンドの両視点からアプローチするのは一つの選択肢と言えます。
また、この図で示している内容を、B社はすべてHubSpotからデータを抽出して管理できる状態になっていました。同じHubSpotというツールを用いてマーケティング部署と営業部署がシームレスに繋がったことにより、部署間連携における無駄が無くなったため、商談数や受注数の向上を効率的にできるようになりました。
現在B社ではHubSpotを活用し、マーケティングから営業、そしてカスタマーサービスまでの統一が進められています。これにより、全ての業務がシームレスにつながり、さらに無駄が削減されようとしています。デジタル化によって無駄を徹底的に省き、高収益体質に生まれ変わることが期待される、まさにDXの成功事例として、他の企業にとっても参考になる取り組みです。
すでに述べていますが、最終的にB社はHubSpotを活用することを選択しました。Webサイトの構築にもHubSpotのCMSHub(2024年7月現在ではContent Hub)を利用しています。
もともとHubSpotがツールとして第一候補に挙がっていたのですが、これまでお話したABMやあるべき姿の話から、Webサイト構築前に今後実施する施策やKGI・KPIについて協議し、「本当にHubSpotが最適か」という観点でツール比較を行いました。結果、HubSpotが最適であるという結論に至りました。
HubSpotを選んだ理由は以下となります。
B社はWebサイトの構築後、以下のようなマーケティング施策を実行しています。
CMSHubに加え、Webサイト構築後にMarketingHubも追加契約し、デジタルマーケティングの推進に向けて動いています。
B社のデジタルマーケティング事例は以上となります。ここからデジタルマーケティング推進に向けて、役立つお話をもう少しさせていただければと思います。
BtoBマーケティングの成功には、ファクトデータに基づいたPDCA(計画・実行・評価・改善)サイクルのマネジメントが不可欠です。
成果が出にくい企業のマネジメントと成果を出すためのマネジメントを図で比較してみました。
最も重要なことは、ファクトデータがあるかどうかです。
ファクトデータがなければ課題認識が曖昧になり、課題解決のための企画も的を射たものになるかどうかわかりません。また、企画に自信が持てないため、声の大きい人の意見に従ったり、目の前のできることから手を付けたりするため評価も曖昧になりがちです。
ファクトデータがあれば、良くない流れはまったく逆のものとなります。BtoBマーケティングにおいて最も重要なことは、ファクトデータをベースにしてPDCAを回すことになります。
では、ファクトデータとは何か。それは、顧客の行動を全てトラッキングしているCRMデータがファクトデータです。つまり、CRMにデータを集約し、そのデータを起点として課題やイシューを明確にし、改善に向けた企画・アクション・評価を行うことが重要なのです。
B社の事例を通じて、BtoBデジタルマーケティングの戦略の立て方を中心に具体的なお話をしました。効果的なマーケティング戦略を立案し、デジタルツールを活用することで、企業は効率的にリード獲得・商談創出することができるのです。
本記事は、本メディアを運営する株式会社クリエイティブホープが出版した書籍「HubSpotワンストップマーケティング」を参考にし作られています。書籍ではこの他にもBtoBデジタルマーケティングやHubSpotに関する様々な情報が載っています。
詳しくお読みになりたい方はぜひ書籍をお求めください。