今回クリエイティブホープの支援事例としてご紹介する情報通信会社D社は、Webマーケティングからデジタルマーケティングに進化し、マーケティング部署が営業部署そして事業部の売上目標達成に向けて貢献ができるようになりました。その一連の流れをご紹介します。
企業向けのパッケージソフトを製造・販売している情報通信業者D社は、もともとマーケティング組織はなく、販売パートナーによる代理販売で大きく収益を得ていました。自社の直販による売上比率はさほど高くありませんでしたが、売上の飛躍というミッションに対し、直販の強化を行うことになりました。それに伴い、マーケティングを推進することになり、マーケティング部署が立ち上がりました。
マーケティング部署が立ち上がったと言っても、マーケティング経験者がいたわけではありません。デジタルに興味がある営業やシステム運用担当者など、デジタルに知見がありそうなメンバーでチームはスタートしました。
突然マーケティングをやれ、と言われても分かりません。そこで私たちにお声がかかりました。
私たちはまず、会社のコーポレートサイトのリニューアルを行いました。当時のコーポレートサイトは会社案内の代わりに製品情報が載っている程度で、自社の製品に興味があるユーザーへの情報提供が足りていませんでした。また、同時に情報収集をしている段階の潜在的な見込客の集客と検索エンジンからの流入数増加を目的として、オウンドメディア(記事サイト)も構築しました。
Webサイトを構築し、流入数を増やす環境は整いました。次に行ったのはコンバージョン数を増やすための施策です。
マーケティング部署の目標は、流入数を増やすことではなく、無料体験や申し込みに繋げるか、でした。そのため、流入したユーザーのアクションを増やすための施策を実行しました。
はじめにコンバージョンの定義をユーザーのフォーム送信と定めました。そしてその後、フォーム送信を増やすために、見込客の検討度に合わせたフォームを増やしました。
Webサイトには検討が進んだユーザーだけではなく、情報収集をしている段階や他社と比較している段階のユーザーも訪れます。よくある「お問い合わせ」や「資料請求」だけでは、まだ検討が進んでいないユーザーはフォーム送信してくれません。そのため、検討度に応じたオファー(コンバージョンポイント)としてお役立ち情報やセミナー、チェックリストなどを準備し、資料閲覧や申し込み時にフォーム送信をしてもらうよう追加を行いました。
また、流入数やコンバージョン数を増やす目的として、リスティング広告やディスプレイ広告などの運用型Web広告の利用もはじめました。広告配信にあたり、着地ページとなるランディングページも準備し、広告経由で資料ダウンロードを促す施策を行うことで、D社は2年で飛躍的にコンバージョン数を伸ばすことができました。
コンバージョン数が増えてきた頃、D社のマーケティング部署は悩みを抱えるようになりました。フォームの送信数は増えているものの、送信者が既存顧客なのか見込客なのかが見えず、マーケティング部署が本当に貢献できているのかが見えない、ということです。一件一件、送信者を確認するには、D社のコンバージョン数はマーケティングメンバーで手分けして確認しようとしても追いつかない量になっていました。
そこでCRMツールをリプレースすることを決めました。実はD社はWebサイト構築当時からCRM機能をもつMAツールを導入していたのですが、取得できる情報が少なく、Googleアナリティクスと同程度の情報しかありませんでした。CRMデータを確認しても、個々の情報は分かり、初回のリード創出チャネルが何なのかは分かる状態でしたが、それ以上の分析ができない状態でした。
Webマーケティングが進み「本当に分析すべき情報が何か」の解像度があがったため、その分析をできるMAツールが必要になったのです。
ここでMAツールを比較したのですが、最終的に選んだのはHubSpotでした。様々な理由がありHubSpotにしたのですが、ここではHubSpotフォームを活用することで、フォーム送信数だけでなく、新規リード獲得数をレポートで確認できるようになり、マーケティング部署が求める新規見込客のフォーム送信数を測れるようになりました。
HubSpot導入後、D社はHubSpotの機能をフル活用しはじめました。
まず、HubSpotとGoogle広告、Meta広告とを連携し、どの広告クリエイティブから新規ユーザーを獲得できているのか、を見れるようにしました。また、後述する営業部署もHubSpotを活用しはじめることにより、広告経由で獲得したリードがどれほど商談になっているのか、どれだけ受注しているのかが分かるようになりました。受注データには売上も含まれますので、広告経由でのROAS・ROIを算出することもできるようになりました。
HubSpotはCRM・MA・SFAの機能が一つになったマーケティングプラットフォームです。もちろんメルマガ配信機能がありましたので、獲得したユーザーに向けてメルマガを配信し、商談化に向けたフォローアップを実施しました。
CRMデータにある情報を基にセグメント・クラスタリングも実施し、自社の特定の商品に興味関心がある方に導入事例や使い方を紹介するメールを送るといった施策も実施しています。
また、ワークフロー機能を活用し、特定の資料をダウンロードした見込客に対し、自動で数通のステップメールも配信できるようになりました。検討度に応じてメールの出し分けを行うことも実施しており、例えば検討度低から検討度中に変更となった場合には、検討度低に向けたメールは送られなくなり、検討度中のユーザーメールだけ届くようにするなど、メールが多すぎてユーザー体験を損なうことがないような配慮を行いました。
ここで改めてデジタルマーケティングの定義をお伝えします。
この記事で言うデジタルマーケティングとは「新規のリード獲得から育成、商談化および受注、そしてカスタマーサクセスに至るまでの一連の顧客プロセスをデジタルを活用して促進する活動」を指します。
この一連の流れはマーケティング部署だけで完結するものではなく、営業部署と連携して推進することではじめて実行できるものになります。
HubSpotを導入時、営業部署はどんな状態だったかというと、スプレッドシートを用いて商談管理や営業の行動管理を行っていました。日々の日報から情報を拾い上げ、営業マネージャーがスプレッドシートにまとめ直すという、非効率な業務が発生していました。
そんな中、営業部署からインサイドセールス部署が新設されることになりました。インサイドセールスメンバーはマーケティング部署に所属することになりましたが、業務内容はこれまでの営業時とさほど変わりありません。
そんな状態であることを事前に聞いていた私たちは、HubSpotをCRM・MAツールとしてだけではなくSFAツールとしても活用することをご提案しました。
スプレッドシートですでに管理をしていましたので、SFA(SalesHub)の設計はすんなり終わり、HubSpot導入後、すぐに活用できる状態でした。これまで管理していた情報が、そのままHubSpotで管理できたのです。
インサイドセールスチームは販売パートナーへの商談または自分たちでクロージングがミッションでしたので、商談見込客へのフォローアップから商談までを担当し、HubSpotで情報管理を行いました。
すると、これまで集計しスプレッドシートでまとめていた作業が丸々レポート機能で表現ができるようになり、データの見える化にかける工数がほぼ無くなりました。特にMRRをHubSpotで管理できるようになりましたので、売上予測もHubSpotを使ってできるようになりました。
またマネージャーもフレッシュな情報を確認できるようになり、商談状況をすぐに把握でき、営業会議の報告資料作成に向けた情報収集の手間も無くなったとのことです。
インサイドセールスチームには日々、マーケティング部署をはじめ様々な商談見込がパスされてきます。パスをしてくる部署により商談見込の角度やアプローチ内容も変わってきます。
そこでHubSpot Sales Hubの「取引」機能を活用し、パイプラインにて案件管理を行うようになりました。案件の命名ルールを決め、またどの部署からパスされたかにより、ワークフロー機能を用いて自動である一定の情報が案件情報に格納されるようにしました。商談見込化する前のWebサイトの閲覧履歴やフォーム送信情報から案件のセグメント・クラスタリングもできるようし、これもまた自動化により手間なく管理ができるようになりました。
またD社のインサイドセールスには、マネージャーが各案件の担当割り振りを行っていました。今、誰がボールを持っていて、誰に案件を渡したのか、渡した後のフォローアップ状況を取引を用いて管理するよう、業務フローの見直しを行いました。今では円滑に担当割り振りや社内確認ができるようになったようです。
インサイドセールスもHubSpotを活用することで、マーケティング部署にも動きがありました。
マーケティング部署のどの流入チャネルから創出した新規リードが商談や受注に繋がっているのかが、HubSpotを使って見える化されるようになりましたので、マーケティング部署が行う施策の優先順位付けに変化がありました。
これまでは新規ユーザー獲得数が多いチャネルにマーケティング資源を投入していましたが、実は新規ユーザー獲得数はそこそこのチャネルが一番多くの商談を獲得していたことが分かり、商談獲得効率の高いチャネルに投入比率を寄せることにすることで、さらに多くの商談を創出できるようになりました。
また、同じデータを基にインサイドセールスとマーケティングチームがコミュニケーションを取るようになりましたので、商談見込客をパスする時に必要な情報を確認し、その情報を収集するための施策を実行する、といった変化も現れました。
いずれにしても、これは商談状況や受注状況がマーケティングからの一連の流れで計測・分析できるようになったからできることで、それを容易に安価にできるのがHubSpotでした。
現在、D社では部署間連携の強化をテーマに、受注数や売上のさらなる拡大に向けて取り組みをしています。HubSpot導入から2年間でインサイドセールスが創出するMRRは飛躍的に向上し、今ではインサイドセールスの生産性向上やカスタマーサクセス部署との連携など、さらにデジタルマーケティングを加速させてビジネス貢献に向け邁進しています。
D社のデジタルマーケティング事例は以上となります。ここからデジタルマーケティング推進に向けて、役立つお話をもう少しさせていただければと思います。
私たちは「マーケティング部署と営業部署の連携がデジタルマーケティング成功のポイント」と言い続けています。実はD社にも支援当初からそのことを伝えていたのですが、マーケティング部署が営業部署と連携を拒んでいた状態でした。
「私たちのミッションは営業にリードを送ることだから」と言っていましたが、よくよく話を聞くと、営業がマーケティングに対する理解が浅く、「余計な仕事を増やすな」と一蹴されることを恐れていたのでした。
HubSpotを使い始めて、意識の変化が起きたのはマーケティングチームではなくインサイドセールスチームや営業部署でした。インサイドセールスのメンバーが、A社で紹介した田所さんのようにゲーム感覚でHubSpotを自主的に活用をはじめたことで、営業にパスする案件の質が良くなったのです。そこで営業もHubSpotの良さに気づき、インサイドセールスやマーケティングの価値を見直しはじめたのです。
営業からの評価が変わったことで、マーケティングチームも徐々に意識が変化してきました。
まず、自分たちの創出したリードが商談や受注に繋がっていることがデータで分かるようになったことで、自分たちの活動が事業や会社に貢献しているのだという自信がわいてきました。そうすると、マーケティング施策をより改善しようという意識が生じます。
施策の質を向上させるためには、営業の持つ知見や経験がとても役に立ちます。そのことをお伝えすると、「分かりました。インサイドセールスチームや営業とコミュニケーションをしてみます」と発言していただき、実際に定例会議を設けるまでになりました。
営業から得た情報を基にマーケティング施策を実行すると、さらに成果が向上していきました。そこで改めて営業との連携が必要であることを認識いただき、今では密なコミュニケーションで施策改善を実施するようになりました。
改めてお伝えしますが、デジタルマーケティングを成功させるためには、マーケティングと営業との連携が必要不可欠です。
WebマーケティングからスタートしたD社は、HubSpotという強力なツールでデジタルマーケティングを推進できるようになりました。それによりKPIも変化し、よりビジネス貢献に向けた施策が打てるようになりました。それができるようになったのはHubSpotでデータをしっかりと管理できるようになったこと、営業とのコミュニケーションを同じHubSpotでできるようになったためです。
デジタルマーケティングを成功させるためには、マーケティングと営業との連携が必要不可欠です。
本記事は、本メディアを運営する株式会社クリエイティブホープが出版した書籍「HubSpotワンストップマーケティング」を参考にし作られています。書籍ではこの他にもBtoBデジタルマーケティングやHubSpotに関する様々な情報が載っています。
詳しくお読みになりたい方はぜひ書籍をお求めください。