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OMO戦略で進化するデジタルマーケティング!HubSpot活用事例:住宅設備メーカーF社

作成者: CRH|Jun 7, 2024 1:24:05 AM

はじめに

今回はクリエイティブホープが支援した住宅設備メーカーのF社の事例を基に、BtoC向け高額商品のマーケティングおよびOMO戦略の推進をHubSpotでどのように行っているのか、をご紹介します。

BtoBの担当者の方々にもお役に立てる内容となっておりますので、ぜひご覧ください。

住宅設備業界とF社の戦略

先に、住宅設備業界のビジネスについて軽く触れておきます。
住宅設備メーカーは基本的に一般顧客ではなく工務店やハウスメーカーを経由して販売する、いわゆる「BtoBtoC」ビジネスです。メーカーが支援するのは工務店やハウスメーカーであるのですが、各工務店やハウスメーカーが他社商品の提案を強化すると自社商品の販売件数が伸び悩む、という課題があります。

F社の売上構成も、9割が工務店・ハウスメーカー経由による新規設備販売でした。10年ほど前から販売本数が低下し、5年ほど前には売上が危機的な状況に陥りました。新規メーカーの参入や他社が工務店やハウスメーカーへの営業を強化したことが大きな要因ですが、その状況の打開だけでは売上は改善されても利益率が悪化するジレンマを抱えていました。

そこで新規の売上創出チャネルとして、既存のBtoBtoCモデルに加え直販によるBtoCモデルを確立することにしました。それにより、直販経由の売上比率向上を経営戦略として定め、その実行方法としてデジタルの活用を推し進めることを決定しました。

新規見込客の開拓から既存客のLTV向上までをデジタルで実現することを意思決定

デジタルマーケティングの推進を決めたF社は、4名のマーケティング特命チームを結成しました。しかしこれまで直販を積極的に行っていなかったF社には、直販の経験はほぼなく、ましてやデジタルマーケティングについては手探りで始める状態でした。

そのアドバイザーとして弊社にお声がかかったのですが、まずは現状把握に向けたヒアリングや調査を行いました。
過去の受注傾向やデジタルを活用し販売するための業務フローなど丁寧に確認していく中で、自社ECサイトの売上が目に留まりました。ECサイトでの売上が私たちの想定よりもあり、内訳や購入客層を見ると既存客からの設備オプション品や消耗品の購入が多いことが分かりました。

既存客であれば直販が可能と判断した私たちは、この既存客のロイヤルティ向上によるLTVの改善に向け、新規見込客の開拓も含めてデジタルマーケティングを推進することを決めました。

OMO戦略という選択

F社をはじめ、住宅設備購入には、ユーザーがショールームに赴き、実際に商品を見て選択するという検討プロセスが一般的です。ショールームでオプションなどを確認し、プランを選んで見積もりが出てくる流れになりますので、どのメーカーもショールームでの商談や顧客体験を重要視しています。F社ももちろん同じで、全国には100か所のショールームがありました。

そのため、デジタルにおいてはこのショールームへの送客をフォローアップし、ショールームで住宅設備を直販した後にオプション品や消耗品を自社ECサイトで購入してもらう、という戦略をF社は選びました。

このような形態をOMO(Online Mergies with Offline)と言います。

O2Oやオムニチャネルとの違い

OMOは、O2O(Online to Offline)やオムニチャネルとは異なります。
O2Oはネットで集客し実店舗で購入する方式、オムニチャネルは全ての販売チャネルを統合的に管理することを指します。

理想のオムニチャネル

ECが登場した当時は、店舗とECとを別々に管理している企業がほとんどでした。在庫も顧客情報も別々のため、例えば店舗には在庫がないがECには在庫が残っている、といった機会損失が生まれていました。効率化や最適化が難しく、顧客満足度もあまり高くない状態を反省し、在庫やデータをあらゆる販売チャネルで共有化したのがオムニチャネルです。このオムニチャネルを完全に実現できている企業は少なく、DXで実現したいことの1つにこのオムニチャネルが挙げられます。

また、オムニチャネルとOMOは何が違うの?と聞かれることがよくありますが、一つの解として、購入する場所やタイミングの設計の違いが挙げられます。

オムニチャネルはどの購入プロセスでどこの販売チャネルで買ってもらっても問題ありません。
OMOの場合は、カスタマージャーニーのどのプロセスにいるかで購入場所を決めていきます。顧客体験をベースに売り場や情報の取り方などを設計していきます。

F社のOMO設計

F社では住宅設備を見てもらうのはショールーム、購入はショールーム・Webどちらでも大丈夫、オプション品や消耗品はWeb(ECサイト)で、という設計を行いました。この設計に沿った検討プロセスを見込客が進むよう、デジタルマーケティングでの施策を設計・実行していきました。

デジタルマーケティングの推進

まずはデータ管理 — CRMツールとしてHubSpotを導入

デジタルマーケティングを推進するにあたり、CRMデータの活用やCRM施策の実行を行うためにHubSpotを導入しました。
HubSpotにはユーザーの行動データや属性情報データなど、様々なデータを格納し活用することが可能です。またマーケター自身でメールやWebページが作成可能で、運用時の工数やコストが抑えられる点からHubSpotが選ばれました。

F社には顧客のデータを管理する様々なシステムやデータベースが存在していました。重複しているデータもあれば、そのシステムにしか入っていないデータもありましたので、HubSpotでデータを活用し施策や分析に活用するのに必要なデータを各システムやデータベースと連携し、HubSpotのCRMにデータを一元化しました。

そうすることで、一連のデジタルマーケティングのプロセス全てにおいて、活用できるCRMデータとなったのです。

見込客を集める仕組みづくり ― 診断コンテンツ

CRMツールの整備を行った後に実施したのは、Webサイト経由での新規見込客の獲得施策でした。様々な施策を行いましたが、その中でも特に、ライトにユーザーの反応を得られる「診断コンテンツ」を活用し、新規見込客の情報を集めました。

診断コンテンツとは、Webサイト上で「はい」「いいえ」を選択していくことで自身にあった商品を選べるようにするもので、情報収集段階であったり、自身にあった住宅設備について悩みを抱えているユーザーから多くの反響があり、新規見込客の獲得に貢献しました。

この診断コンテンツもHubSpotのランディングページ機能やフォーム機能、ワークフロー機能を用いて作成しました。診断中に選択した項目を踏まえて条件分岐を行い、最終的には複数パターンの回答結果を出せるようにしました。また診断結果を表示させるためにはメールアドレスの入力を必須にし、ライトな顧客情報を獲得できるようにしました。

メールアドレスだけか、と落胆された方もいるかもしれませんが、その後のフォローアップやカタログダウンロードなど、ユーザーの検討状況に合わせたコミュニケーションを行うことで、その他の顧客情報も入手し、CRMデータのリッチ化ができました。

 

見込客へのアプローチ ― メールマーケティング

新規見込客の情報を取得できるようになると、HubSpotのCRMに徐々にメールアドレスが溜まります。その取得したメールアドレスに対し、メルマガ配信を実施しました。

HubSpotのMarketingHubにはメール配信機能があります。見込ユーザーに対してメルマガを配信することで、F社の目的とするユーザーアクションを促しました。
また、一斉配信メルマガの他、ユーザーの検討度や興味関心に合わせたセグメントメール配信も行いました。

コミュニケーションツールの強化 — LINE連携

皆さんは普段、コミュニケーションでどんなツールを使われていますか? 多くはLINEと回答されるのではないでしょうか。
F社もメールだけのコミュニケーションでは限界があると感じており、より見込客に反応してもらうためにLINEを活用することにしました。

これまでLINE公式アカウントがなかったため、LINE公式アカウントの開設から始めました。
LINE公式アカウントは友だちに対してメッセージを一斉配信することが可能です。反面、LINE公式アカウントだけでは特定のユーザーだけにメッセージを配信するというセグメント配信は難しい状態でした。
顧客体験を向上するためには、LINE公式アカウントだけでは足りない……その課題を解決するため、LINE公式アカウントとHubSpotとを連携し、高度なCRM施策を行うことを決めました。

HubSpotと連携することで、HubSpotのCRMデータを活かしたセグメント配信が可能になります。具体的には、HubSpotで作成したユーザーリストに対してメッセージを配信するのですが、それによりメッセージの対象ではない友だちへの余計なメッセージが飛ばなくなり、顧客体験を損なうことが少なくなりました。また必要な友だちに必要なメッセージだけを届けられるようになったので、メッセージ配信コストの削減にも寄与しました。(LINE公式アカウントは、一定の配信メッセージ数を超えると、配信したメッセージ数に応じた従量課金が発生します)

Beeelineの詳細はこちら

LINE公式アカウントを整備することで、メールではリーチできなかった見込客リストに対して情報を届けることができるようになりました。開封率・クリック率はメールよりも圧倒的に高く、施策に反応する見込客数を大幅に増やすことができました。

 

インサイドセールスの強化 — CRMデータの活用

HubSpotでCRMデータを一元管理し、見込客の情報も収集でき、メールやLINEといったデジタル施策でショールームへの来店推進施策を行えるようになりました。このマーケティング部署によるアプローチもそうですが、その後、特に力を入れたのはインサイドセールスでした。

集めた個人情報をデータ分析・精査し、ショールームへの来店見込度の高い顧客を絞り込んでインサイドセールスのアタックリストにしました。これまでのWeb行動やCRMデータに入力されているデータを基にインサイドセールスが個別のフォローメールを配信したり、架電時のトークスクリプトに役立てることで、効率よくショールームへの来場を促すことができるようになりました。

ショールーム来店時の興味関心を測る — QRコードによる計測

ショールームに送客するまでがデジタルの役割ではありません。HubSpotのCRMデータをさらにリッチにし、顧客の検討状況や興味関心をさらに精緻化する施策を行いました。

まず、実際にショールームへ来店したかどうかの計測を行いました。ショールームの入り口にディスプレイを飾り、そこにQRコードを大きく表示しました。このQRコードをスマホで読み取ると、来場アンケートが表示される仕組みにしました。

このQRコードを読み取り、フォーム送信をするという行動を促すことで、来場したというデータをHubSpotに格納できるようになりました。そのため、来店予約したけれどもショールームに来なかったユーザーへのアプローチなど、さらなるCRM施策に活かすことができました。

 

ショールーム来店後のフォローアップ — 営業との情報連携

ショールームへの送客する仕組みが整った後、来店ユーザーの成約率を高めるためにデジタルでのフォローアップ施策も行いました。

ここでポイントになるのは、ショールーム営業との連携です。
ショールームで接客をすると、プラン作成時など見込客の待ち時間に、営業はアンケートの協力を依頼します。この時見込客が記入したアンケートの中身をHubSpotに格納することで、来店後のフォローアップ施策が自動で行われるよう設定を行いました。

来店御礼メールの他、アンケートに記入された内容を基にしたセグメントメールやLINEメッセージの配信をすることで、興味関心度を高める施策です。またアンケートも紙ではなくタブレットを用いたりすることで、入力の手間を省くことも可能です。

ロイヤルティ向上 — カスタマーサクセス施策の強化

ここまで、ショールームへの送客およびショールーム来店後のフォローアップまでの施策をご紹介しました。いよいよ、この後は既存客のLTV改善に向けたロイヤルティ向上施策です。

まず行ったのは、記事サイト(オウンドメディア)の構築でした。F社にはよくあるQ&Aといった、カスタマーサポート的なWebサイトやページはあったのですが、ロイヤルティを向上させるための情報がWeb上に無かったのです。
そのため、まずは顧客満足を向上させるため、設備利用時に役立つ「お役立ち情報」を記事として多く掲載しました。また記事のカテゴリとユーザーの興味関心のカテゴリを揃え、ユーザーが求める情報を、メールやLINEで送り、顧客満足度を高めました。

また、既存客専用のマイページを作成し、Web上での行動を基にスタンプを付与する施策を行いました。例えばLINEで友だち登録する、特定のアンケートに回答するなど、HubSpotで行動を計測し、その行動によりスタンプを付与していく、というものです。
このマイページもHubSpotのContent Hubやワークフロー機能で実装しました。結果、スタンプを獲得するために既存顧客の行動がさらにアクティブになり、ファン化が促進されました。

また、顧客満足が高まった状態で、自社ECサイトの紹介やオプション品、消耗品の紹介を行いました。記事を紹介するLINEメッセージの中に、商品の紹介やECサイトへのURLを織り交ぜ、不快感がない程度にアピールを続けました。

2年間改善を繰り返した結果、既存客の自社ECサイトにおけるクロスセル売上が、大幅に増加することに成功したのです。

まとめ

F社はOMO戦略として「住宅設備を見てもらうのはショールーム、購入はショールーム・Webどちらでも大丈夫、オプション品や消耗品はWeb(ECサイト)」という設計を行い、これらの行動を促進するためにデジタルマーケティングで様々な施策を実施しました。デジタルマーケティング環境整備からショールームへの送客、来店後のフォローアップ、そして成約後のカスタマーサクセスまで、一連のプロセスをHubSpotを用いて促進し、成果を上げていくことができました。

F社の事例は、オペレーションの自動化・効率化という意味でのDX(デジタルトランスフォーメーション)事例といえます。DXの実現により収益が伸びるだけでなく、企業として強い体質を構築することができました。

 

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本記事は、本メディアを運営する株式会社クリエイティブホープが出版した書籍「HubSpotワンストップマーケティング」を参考にし作られています。書籍ではこの他にもBtoBデジタルマーケティングやHubSpotに関する様々な情報が載っています。
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