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勝てる市場を可視化!TAM・SAM・SOMとは? B2B商談創出につなげる顧客分析の基礎知識 その5

TAM・SAM・SOM (1)

実際に獲得できそうなターゲットはどこ?
TAM・SAM・SOMでまずは市場規模を分析しよう

営業やマーケティング戦略の立案にあたり「どこをターゲットにするか」迷うことはありませんか?
本記事は、TAM・SAM・SOMという市場規模を表すフレームワーク切り口に、用語の意味や考え方を掴み、現場で使える形で落とし込むところまでお役立ていただける内容です。

HubSpotを活用した実践方法、そして商談創出への貢献メカニズムまで解説します。
営業戦略をデータドリブンに再構築し商談を増やしたいとお考えの方は、ぜひご一読ください。

TAM・SAM・SOMとは?

TAM・SAM・SOMとは、一言でいうと「市場規模を表したフレームワーク」です。

TAM・SAM・SOMは包括関係にあります。まず大きなTAMという枠組みがあり、その中でSAMがあります。さらにその中にSOMがある。といった関係性です。

・TAM(獲得できる可能性のある総市場規模)
・SAM(獲得しうる最大の市場規模)
・SOM(実際にサービスを提供して獲得の可能性のある市場)

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具体的な意味や考え方について、これから順を追ってご紹介します。 

TAM(Total Addressable Market)

TAMはTotal Addressable Marketの略で「獲得できる可能性のある総市場規模」を表します。
TAMを正しく設定するには、まず※信頼できる外部データ(政府統計・業界団体・主要リサーチ会社など)を一次データとして採用し、対象業種・規模・対象地域を明確にして集計することが重要です。

※信頼できる外部データの一例:
政府統計の総合窓口 e-Stat
経済産業省 主要統計ページ
帝国データバンク 企業概要DB
矢野経済研究所 市場調査資料

SAM(Serviceable Available Market)

SAMはServiceable Available Marketの略で「獲得しうる最大の市場規模」を表します。
TAMよりも少し絞り込んだ市場の概念です。
短期から中期の戦略に即して業種・規模・地域・チャネルなどで絞り、当面の獲得対象を定めます。SAMの切り方は戦略によって変わるため、まずは市場を細分化し狙いを明確にすることが大切です。

SOM(Serviceable Obtainable Market)

SOMはServiceable Obtainable Marketの略で実際にサービスを提供して獲得の可能性のある市場を表します。
SAMの中から実際にサービスを提供して顧客獲得や売上につながる可能性のある市場を指します。
自社のサービスや製品の供給能力やマーケティング/営業の到達力を前提に、現時点で実際にリーチ可能な領域で見込める売上の
上限を表します。

“勝てる市場”を可視化する実践ステップ

こからは、属人的な勘や経験ではなく根拠のある思決定するための手順を、TAM→SAM→SOMの順に整理します。
まずは下記の3ステップで、マーケと営業の優先順位・KPI・リソース配分を定めましょう。

ステップ1:獲得できる可能性のある総市場規模を正しく把握する(TAM)

TAMを正しく把握するには、まず「市場の境界(業種・規模・地域・用途)」を先に固定し、信頼できる一次データを用いることが大切です。
その前提で、まずはシンプルな計算式(トップダウン/ボトムアップ)で試算しましょう。
まずは総市場を定めることで、次のステップ以降のSAMやSOMの設定がぶれにくくなります。

ステップ2:獲得しうる範囲を条件で切る(SAM)

SAMは、広義ではTAMのうち、自社の提供サービスや製品価値、提供体制で現実的に狙える“獲得しうる市場範囲”を指します。
実際に現場で実践していくにはTAMで定めた条件の市場から除外条件(対象外の業種、企業規模など)で絞り込み、さらに実際にリーチできた事実データで現実性を担保することが大切です。
ここでいう「リーチできた実際のデータ」とは、マーケティングオートメーション(MA)や顧客管理システム(CRM)を活用し、メール到達率・配信可能ドメイン率・電話接続率・セミナー参加率・初回面談化率など、過去の接点データを参考にして算出します。

ステップ3:実際にサービスを提供して獲得できる市場を見積もる(SOM)

SOMは、実際にサービスを提供して現実的に獲得できる市場を見積もるので、期間(例:四半期・半期)を設けましょう。SAMで定めた“獲得しうる範囲”の中から、現時点の供給能力と実績CVRで“実際に獲得できる市場規模”を数値化します。

算出は、先に挙げた「リーチできた実際のデータ」× 商談化率 × 受注率を対象期間で見積もり、最後にビジネスモデルに応じた供給能力(例:担当者稼働・サービス提供の上限・オンボーディング枠など)で上限をかけます。
データは直近90日の実績
(商談化率・決定率・平均受注額)を使い、月次で更新/四半期での見直す機会を設けることが好ましいです


TAM・SAM・SOMの活用に向けて想定される課題と対処法

用語の意味や考え方を理解しても、現場での運用に向けて以下のような課題をお持ちの企業も多いのではないでしょうか?
ここではTAM・SAM・SOMの活用に向けて想定される課題について触れていきます。

1.顧客データがバラバラで管理されている

顧客データはあるが、名刺情報やExcel、個人フォルダなどバラバラで管理していませんか?
どれが最新か分からない/1つのリストにまとまらない」ことで、施策の前段階で情報の集約だけで手間取ってはいないでしょうか。こういった課題は多くの企業で心当たりのある悩みのひとつです。

👉顧客データを集約するためにMA・CRMの導入を検討しましょう。
まずは散在する名刺・Excel・SFA情報を1つの基盤に集めることが最優先です(重複統合・最新版の一本化が目的)。
集約後にTAM/SAM/SOMの簡易フラグ(例:TAM条件合致=✓、SAM=TAMを満たし、除外に当てはまらない場合は✓、SOM=今期対象)を最小項目(会社名・ドメイン等)に付け足すだけでも、次の分析にスムーズに繋がります。

2.企業データの精度が低く名寄せができていない

企業データがあるが、社名の表記ゆれ、本社と支店の重複、業種や従業員数の未入力。といった精度の低い状態での管理になっていませんか?
この状態だとTAMは膨らみ、SAMはぶれ、SOMの絞り込みも合わないままになります。

👉名寄せと標準化を先に行いましょう。
まず主要キー=会社ドメインを決め、表記ゆれ置換の簡易ルール((株)除去・全角半角統一)を適用。
業種=日本標準産業分類/規模=従業員帯/地域=都道府県コードに揃える。といった部分から着手しましょう。
さらに、TAMやSAMなどの設定には信頼できる外部データが必須です。
※ 企業データの名寄せや信頼できる企業データベースを必要とする場合、弊社の名寄せフォーミーが有効です。
大量なデータの名寄せ(重複排除・表記統一)を効率化し、ST&E(法人情報提供サービス)の企業データベースに基づく高精度の企業属性を付与できます。重複のないTAMの母集団作成と安定して抽出できるSAM・SOMを短期で整備できます。

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3.人的リソースの不足

日々の顧客対応やマーケティングタスクに追われ、データの整備や見直しに手を付けられない。といった状況はありませんか?
目の前の仕事も大切ですが、データの整備や統合、更新が止まってしまうと、TAM/SAMは古い前提のまま、SOMも現実と乖離した数値で固定されてしまいます。

👉一人や最少人数でも展開できる“型”を定めましょう
まず、既存のMA/CRM(なければ一つのツール/スプレッドシート)にデータを格納し一本化することが大切です。次に、会社名・ドメイン・業種・従業員帯・都道府県の最低限の5項目だけでダッシュボードやマスター表を作り、TAM/SAM/SOMの簡易フラグを付けて“基準となる土台”を整えます。
名寄せの徹底や高度なスコアリングは置いておき、量が多い場合は上記で挙げたような名寄せツールに任せる。
こういった順番なら、人的リソースが少ない一人担当者でも着手できます。

HubSpotで実装するTAM/SAM/SOMの具体的な3つの手順

ここでは、TAM/SAM/SOMの考え方を現場で“動く仕組み”に落とし込む方法を説明します。
MA・CRMのなかでもデータ一元管理~自動化~可視化に優れたHubSpot
を例に、
プロパティ → 動的リスト → ターゲットアカウント → 自動化 → ダッシュボードの順で、TAM/SAM/SOMをぶれずに運用していく具体的な手順をご案内します。

データ基盤設計(プロパティ+スコア)表で把握

 

区分 プロパティ名の例 用途・意味 入力例・設定イメージ
既定プロパティ

Target account
(会社)

「営業に注力する企業かどうか」を示すチェック項目です。ABM(アカウントベースマーケティング)のターゲット一覧に自動で反映されます。 チェック形式(True/False)※チェックを入れるとターゲットアカウントに登録。
カスタムプロパティ

fit_must/
fit_exclude

SAM(狙うべき市場)を判断するための条件。
「当てはまる条件」(Must) と「除外すべき条件」
(Exclude) を設定します。
チェック形式(True/False)
※例:「従業員50名以上=Must」「代理店やその他、=Exclude」など。
カスタムプロパティ employee_band(従業員数帯) 企業の規模(従業員数帯)で絞り込むために使います。
TAM(市場全体)の母集団を定義するためのプロパティです。
プルダウン形式
例:「〜49名」「50–299名」「300–999名」「1000名以上」などで区切る。
カスタムプロパティ som_probability

SOM(実際にサービスを提供し今期獲得できる市場)の見込み度を数値化。営業・マーケの実績をもとに現実的に今期中に獲得の可能性を可視化します。

プルダウン形式
例:「見込度 A:80%~100%」「見込度 B:50%~80
%」「見込度 C:30%~50%」などで区切る。

カスタムプロパティ Company score(企業スコア) 属性(業種・規模など)+行動(サイト閲覧・メール開封など)を点数化して優先度を数値で可視化。抽出・自動化・配賦の基準に使えます。 自動で数値反映(例:業種一致+10/従業員数一致+10/直近商談+15/サイト閲覧+5)

ポイント:
この5項目を最初に整備することで、TAM(市場全体)→SAM(条件合致)→SOM(今期中) の分類をHubSpot上で展開することが可能です。
また、「プロパティ設計」と「スコア設計」を同時に行うことで、ワークフローの自動割当やSlack通知などの自動化条件をスムーズに設定でき、営業・マーケ双方で共通の“判断軸”を持った運用が可能になります。

ポイント:HubSpotのターゲットアカウント機能について
HubSpotにはTAM/SAM/SOMのような市場層をCRM上で再現・運用するための機能が標準で用意されています。

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ターゲットアカウント機能(Target Accounts)」を使うと、会社レコードにある「Target account」プロパティをTrueに設定するだけで、営業・マーケが注力すべき重点企業(SOM候補)をCRM上で一元管理できます。Tier(ティア)の設定や取引の紐づけ、決裁者情報・担当者情報の追加だけでなく、AIによる企業調査も可能です。
Trueにした企業は、商談状況・担当者・最近の接点履歴をビューのように一覧で把握できるようになります。


また、HubSpotでは「市場」セグメントのプロファイルを作成することも可能です。


これによりターゲットとする市場の母集団を明確に把握でき、「市場全体」「狙うべき層」「今期注力層」を比較しながら、
どこにリソースを集中すべきかを的確に判断することに役立てることが可能です。


ターゲットアカウントや市場についての機能詳細をお知りになりたい場合は、下記のHubSpot公式情報をご確認ください。
・ターゲットアカウントの設定
・マーケット(市場)の設定

ターゲティングと自動化設計(動的リスト+ワークフロー)

次のステップは基盤設計で整えたプロパティやスコアを、実際の運用で「動かす」段階です。
ここでは、TAM/SAM/SOMの各層を自動で分類・更新し、優先度の高い企業にすぐアクションできる仕組みを作ります。

まずは 動的リスト(Active List) で自動抽出を行います。
TAM_all(対象業種・規模)
SAM_fit(除外を除いた適合企業)
SOM_hot(商談化確度の高い企業)
といった順にリストを作成すれば、常に最新の状態が維持されます。


抽出条件の一例としては、以下のようなイメージです。

・TAM_all:対象業種かつ従業員数が一定以上
・SAM_fit:fit_must = True かつ fit_exclude = False
・SOM_hot:Target account = True かつ(直近30日で商談あり or Web閲覧N回以上)


次に、ワークフロー(会社ベース) で“動かす”工程を設計します。
Company score や Tier 条件をトリガーとして「Target account = True」を自動付与し、以下のような処理を自動化します。

・営業担当者への所有者割り当て
・タスク自動作成/Slack通知/関連コンタクトをシーケンス登録
・条件に応じた優先アカウントの自動分類(Tier 変更など)

このように「見つける(リスト)」「動かす(WF)」をセットで回すことで、
TAM/SAM/SOMの三層を動的に運用でき、リード管理と商談創出のスピードが大幅に上がります。

ダッシュボードでの可視化と見直し

最後は、成果を定期的に見える化し、前提をアップデートしていくフェーズです。
ダッシュボードを作成し、TAM/SAM/SOMそれぞれの到達率や進捗を一目で把握できるようにしましょう。

指標カテゴリ KPI名の例 内容・目的 更新頻度
市場到達

TAM到達率

TAMとして定義した母集団 のうち、メール送信・架電・商談・イベント等で 何らかの接点を持てた企業の割合。市場全体にアプローチできているかを可視化する指標。 月次
適合範囲

SAMカバレッジ※カバレッジ=狙う市場のうち、実際に接点を持っている割合

SAM_fit のうち、実際に接点を持ちアプローチ済の企業の割合。
「狙える市場(SAM)」の中で、メール送信・架電・商談・イベント参加など何らかの接触ができた企業の比率を示します。
月次
商談進捗 SOM進捗率

Target account のうち、商談化・受注まで到達した割合。
優先企業への営業活動がどれだけ成果につながっているかを確認します。

月次
ファネル効率 MQL→SQL→商談→受注CVR

SOM(実際にサービスを提供し今期獲得できる市場)の見込み度を数値化。営業・マーケの実績をもとに現実的に今期中に獲得の可能性を可視化します。

四半期

運用品質

SLA遵守率
※SLA=対応スピード・対応品質のこと

新規リード発生後、営業が初回アクションを起こすまでの平均時間。
数値が短いほど、機会損失が少なく、商談化率が高まりやすい指標です
月次

ポイント:
ダッシュボードでは
自社の定義したTAM/SAM/SOMのプロパティやリストを指標化することで、データ構造と運用KPIを一致させましょう。
また、90日サイクルでのレビューを推奨します。勝率・商談化率・処理能力の変化を踏まえてスコア閾値や抽出条件を調整すれば、
データと現場の感覚のズレを最小化できます。

これらの3ステップの構成(①データ基盤 → ②ターゲティングと自動化 → ③ダッシュボードによる可視化と見直し)で、
「分析・実装・運用・改善」がHubSpot上で循環する、“動くTAM/SAM/SOMモデル” が完成します。


 

まとめ:TAM/SAM/SOMを“仕組み化”して効率的な商談創出を

TAM/SAM/SOMは「どこに・どれだけ・どの順で」営業資源を投下するかを明確にするための基本フレームです。
理解するだけでなく、実際の業務で回せる“運用設計”に落とし込むことで初めて成果につながります。

HubSpotを活用すれば、三層の分析軸をプロパティ・スコア・リスト・ダッシュボードで一元管理でき、月次で精度を高めながらPDCAを回せます。

市場到達率や商談化率を見える化し、“勝てる市場”に集中することが商談創出を最短化する第一歩です。
まずは自社の顧客データをTAM/SAM/SOMの観点で見直し、HubSpotで“動く土台”を整えることから始めてみませんか。

 


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TAM/SAM/SOMを整理し、市場やターゲットが明確になっても次のような課題に直面するケースもございます。

「分析はできたが、実際にアプローチすべき企業リストが整っていない…」
「データに基づいた理想の顧客像は明確になったが、そのリストが手元にない...」
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