
営業勝率を上げるカギは、勝ち/負けの本質理解にあり
営業活動における勝率改善は偶然ではなく、勝敗要因の「可視化」と「体系化」が鍵です。特にB2B営業は意思決定に多くの関係者・判断基準が関与するため、Win-Loss分析を通じて確かな勝ちパターンを抽出できれば、属人的な営業手法から脱却し組織的に営業力を高められます。
この記事では、属人的営業から脱却し、組織的な営業力強化を実現するための有効な手法として注目されているWin-Loss分析について、CRM(HubSpot)の具体的なデータ連携や分析方法も示しつつ、Win-Loss分析の実践的な進め方をご紹介します。
現状の勝率に課題を感じている方は、ぜひご一読ください。
Win-Loss分析とは?
Win-Loss分析とは、成立した商談(Win)と失注した商談(Loss)について、その結果を左右した要因を詳細に分析する手法です。
これにより、何が受注につながり、何が失注の原因となったのかを客観的に把握し、今後の営業戦略やプロセス改善に活かすことを目的とします。
他にもB2Bマーケティングの分析手法についてご興味をお持ちの方は下記のお役立て記事もご確認ください。
RFM分析とは?B2Bの商談創出につなげる顧客分析の基礎知識 その1
CPM分析とは?B2B商談創出につなげる顧客分析の基礎知識 その2
分析の目的と考え方
Win-Loss分析の最大の目的は、商談の結果から共通の「勝ちパターン」と「負けパターン」を導き出し、成果の再現性向上と課題の改善を図ることです。
商談が成立した理由、あるいは失注した理由を深掘りすることで、製品・サービスの強みや弱み、競合に対する優位性、営業プロセスのボトルネックなどを明確にします。これにより、営業戦略の立案、マーケティング施策の改善、製品開発へのフィードバックなど、多岐にわたる領域での意思決定に貢献します。
なぜ今注目されるのか?B2B営業での有効性
B2B営業では、意思決定に複数の関係者が複雑に絡み合い、評価基準も「価格」「機能」「導入効果」「ベンダーの信頼性」など判断基準も多様化しています。そのため、単なる感覚や経験での判断でなく、体系的な結果要因の見える化が不可欠です。
Win-Loss分析は、この複雑な意思決定プロセスを整理し、勝因や敗因を明確にすることで、営業活動におけるボトルネックや改善点を発見し、今後の戦略に活かすことができます。
商談データから要因を見える化する方法
Win-Loss分析を実務で活用するためには、体系的な手順を踏むことが重要です。
ここでは、分析の具体的なステップを解説します。
ステップ1:商談の評価基準を定義する
まず、商談の成否に影響を与える可能性のある評価項目を具体的に定義します。これらの項目は、商談のプロセス全体を網羅し、客観的に評価できるものであることが望ましいです。
評価基準の例:
- 価格(Pricing): 価格競争力、価格提示方法
- 競合優位性(Competitive Advantage): 競合他社との差別化ポイント
- 提案内容(Proposal Content): 顧客の課題解決度、提案の明確さ
- 担当者対応(Sales Rep Performance): 営業担当者の知識、対応スピード、顧客との信頼関係
- 製品・サービス機能(Product/Service Features): 機能の豊富さ、使いやすさ
- 導入コスト/効果(ROI): 費用対効果、導入後の運用コスト
- 企業ブランド/信頼性(Brand/Trust): 企業の知名度、実績
ビジネスモデルや商材によって異なりますが、これらの項目を事前に定義することで、後のデータ収集と分析がスムーズに進みます。
💡具体的な方法:HubSpotでのカスタムプロパティーの作成
HubSpotのようなCRMでは「カスタムプロパティー」を使用して、商談に必要な評価基準を設定できます。
例えば、ビジネスモデルや商材に応じて「提案内容の納得度」「競合他社との比較」「価格の競争力」などをプロパティーとして設定し、商談の進捗ごとに評価していきます。
🔧カスタムプロパティーの設定方法
HubSpotの「設定」から「プロパティー」へ進みます。
「プロパティーを作成」から「取引(商談)」オブジェクトタイプを選択します。
「価格」「競合優位性」「提案内容」といった項目をプロパティーとして追加しましょう。これにより、各商談でこれらの要素を評価し記録することが可能になります。
ステップ2:商談データを蓄積・整理する
定義した評価項目に基づいて、商談に関するデータを体系的に収集・蓄積します。CRMツールを最大限に活用することがこのステップの鍵となります。
- CRMの活用: 商談の進捗、担当者、競合情報、顧客の課題、提出資料などをCRMに記録します。
HubSpotなどのCRMは、これらの情報を一元管理するのに非常に有効です。
- 営業日報/商談履歴: 担当者が記録する日報や商談メモから、顧客との会話内容、顧客の反応、懸念事項などを抽出します。
- 顧客ヒアリングシート: 商談終了後に顧客から直接フィードバックを得るためのシートを作成し、収集します。
- マーケティングデータ: 顧客が接触したコンテンツ、セミナーや展示会の参加履歴なども分析に活用します。
これらの異種データを統合し、分析可能な形式に整理することが重要です。
💡具体的な方法:HubSpotでのデータ蓄積とレポート活用
HubSpotでは、営業活動によって蓄積される「取引(商談)」のデータに加え、営業担当者が入力する情報をカスタムプロパティーとして管理することで、分析に必要な情報を一元化できます。
取引(商談)パイプラインの活用: 商談の各ステージで、STEP1で定義したカスタムプロパティーの入力を必須化することで、データ入力を徹底できます。これにより、各商談の評価項目が自動的に記録されていきます。
失注理由プロパティの活用: 失注時には、HubSpotの失注理由(Lost reason)プロパティーを設けて詳細に設定し、担当者に選択させることで、具体的な失注要因をデータとして蓄積します。これもカスタムプロパティーとして、より詳細なカテゴリ(例:価格、競合A社、機能不足、担当者との相性など)を設定できます。
レポート機能の活用: HubSpotのレポート機能を使用し、蓄積された取引データを集計・可視化します。
「レポート」>「レポートを作成」から、取引ベースのカスタムレポートを作成し、WinとLossの商談について、STEP1で設定した各評価項目の集計やクロス分析を行うことが可能です。例えば、「失注した商談の主な失注理由」や「受注した商談に共通する提案内容の納得度」などをグラフで確認する。といったことが可能です。
ステップ3:対応パターンを設計する
収集・整理したデータを分析し、「勝てる理由」と「負ける理由」を具体的なパターンとして特定します。
このパターンを、商談ステージや顧客タイプ別に分類し、それぞれに応じた対応戦略へ落とし込みます。
例:
これらのパターンに基づいて、
- 特定の課題を持つ顧客へのアプローチ方法
- 競合他社に打ち勝つための差別化戦略
- 商談フェーズごとの最適な資料やトークスクリプト
- 営業担当者のスキルアップが必要な領域
などを具体的に設計します。これにより、チーム全体で再現性のある営業活動を展開できるようになります。
💡具体的な方法:HubSpotでのパターン設計と施策への展開
HubSpotでは、レポート機能で得られた分析結果を基に、営業・マーケティング施策を直接連携させることが可能です。
商談レポートのダッシュボード化: STEP2で作成したレポートを共有ダッシュボードにまとめることで、チーム全体でWin-Loss分析の結果を常に「見える化」し、各担当者と共通認識を持つことができます。
ワークフローとタスクの自動化: 特定の失注理由(例:価格)が多い取引(商談)タイプに対して、HubSpotのワークフロー機能を使って、営業担当者への「価格競争力強化のための追加資料送付」といったタスクを自動で割り当てて通知メールを飛ばしたり、関連するナレッジベース記事を顧客に送ることを指示することができます。
ターゲットリストの作成とマーケティング連携: 分析結果から判明した「特定の課題を持つ見込み客」や「競合他社から奪いたい顧客」といったセグメントを、HubSpotのリスト機能で作成します。このリストに対して、マーケティングチームがWin-Loss分析で得られた知見(例:響きやすいメッセージ、強調すべき強み)に基づいたパーソナライズされたメールやポッポアップによる訴求などを実施できます。
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営業現場での活用が進まない理由と解決策
Win-Loss分析の重要性は広く認識されつつも、多くの企業でその実行と定着が課題となっています。ここでは、よくある課題と、CRMと絡めた具体的な解決策を提示します。
課題1:主観的・曖昧な判断になってしまう
営業担当者の主観や記憶に頼った情報収集では、分析結果に偏りが出てしまい、客観的な洞察を得ることが困難になります。
解決策(例):
-
営業日報やCRMの入力フォーマットを標準化する: 商談結果の要因(価格、機能、競合、提案内容など)について、選択式やスコアリング形式の項目を設け、定量的に記録する運用を徹底します。HubSpotのカスタムプロパティなどを活用し、必要な情報を漏れなく、かつ客観的に入力できる仕組みを構築しましょう。
-
具体的な記入例を共有する: 担当者の主観で「良い提案だった」のような曖昧な表現ではなく、「顧客の具体的な課題に対して、自社の〇〇機能(サービス)が他社より優れている点を具体的に提示できた」といった、具体的な記述を促すガイドラインを設ける。
課題2:失注理由の深掘りがされていない
特に失注案件では、担当者が顧客への再アプローチをためらったり、本質的な失注理由を把握しきれなかったりすることが多く、貴重な学びの機会を逸しているケースが見られます。
解決策(例):
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顧客ヒアリングを営業以外の第三者が行う: 失注顧客に対し、営業担当者ではない第三者(マーケティング部門やカスタマーサクセス部門など)が、分析目的であることを明確にした上で、失注理由に関するヒアリングを実施します。これにより、顧客が本音を話しやすくなり、より客観的な情報を得られます。
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匿名アンケートを活用する: 失注顧客向けに、オンラインで回答できる匿名アンケートを実施し、製品・サービス、営業担当者の対応、価格などに関するフィードバックを収集します。
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失注理由カテゴリの細分化: CRM上で失注理由を「価格」「機能不足」「競合優位性」「タイミング」「担当者対応」など、詳細なカテゴリに分け、選択肢形式で記録する運用を導入します。
課題3:分析結果を施策に落とし込めていない
分析で得られた気づきが、具体的な営業戦略やマーケティング施策に結びつかず、単なる「データ」で終わってしまうことがあります。そうならないための方法が以下の通りです。
解決策:
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分析結果をセグメント別に分類し、具体的なアクションプランに落とし込む: 例えば、「特定の業界の顧客は価格に敏感なため、提案資料にROIに関する情報を追加する」「競合〇社とのバッティングが多いケースでは、初回商談で△△の強みを強調する」といった、具体的な施策に繋げます。
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営業チームとマーケティングチームの連携を強化する: Win-Loss分析の結果を定期的に共有し、営業現場の課題をマーケティング施策(例:ホワイトペーパー、事例記事、セミナー内容)に反映させます。HubSpotのようなCRM/MAツールを使うことで、顧客データと施策効果を紐付けて検証しやすくなります。
-
PDCAサイクルを回す: 分析結果に基づく施策を実行し、その効果を定期的に測定・評価します。そして、必要に応じて施策を改善するというPDCAサイクルを継続的に回すことで、分析が単発で終わらず、継続的な改善活動につながります。
まとめ:失注を学びの機会に!
Win-Loss分析で営業戦略をアップデート
「なぜ失注したのか?」その原因を深掘りせずに新たな商談に臨むのは、貴重な学びの機会を逃しているので改善するアプローチを取っていきましょう。
Win-Loss分析は、失注の理由を客観的に可視化し、営業戦略やアプローチの改善点を浮き彫りにします。この分析サイクルを回すことで、現在活用しきれていない営業リストも、勝ち筋に沿ったアプローチで「HOTな見込み客」へと転換させ、効率的な商談創出を実現できます。
まずは、過去の商談情報を見直し、Win-Loss分析で得られた知見をもとに顧客の判断基準を整えることから始めてみませんか?
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Win-Loss分析を通じて商談の勝ちパターンが見えてきたら、次にその知見を活かしていかに効率的に商談を創出し、売上に繋げるかが重要になります。
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