アンバサダーマーケティングとは、商品やサービス等のブランドの熱心なファンをアンバサダーとして認定し、顧客の積極的な口コミ投稿を促すマーケティング施策の1つです。
ソーシャルメディアを中心としたインターネット技術の発展により、生活者が触れる情報は膨れ上がっています。その中で、かつては集客の源とされていた広告を避ける人々が増え、その影響力は年々減少している傾向にあります。
そこで、注目を浴び始めたものが"口コミ"や"紹介"を活用したマーケティング施策なのです。
この記事ではアンバサダーマーケティングの実践方法や、そのメリットを具体事例を交えてご紹介します。
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アンバサダー(英語:Ambassador)とはそもそも、「大使」や「代表」「代理人」という意味です。ビジネスシーンでは、企業やブランドを積極的に応援し口コミを投稿してくれるファンのことを指します。ソーシャルメディアの発展を背景に、 生活者は自身が強い興味・関心を持つ企業や商品・ブランドなどの情報を、自発的に発信しやすい環境にあります。
ここでいう「アンバサダー」とは、最近よくみられるような著名人を起用した「著名人アンバサダー」ではなく、自身もブランドのファンである実際の顧客だ、ということです。必ずしも著名人である必要はありません。
ここで注目すべきなのは、著名人であることや、影響力があることではなくどれだけブランドに対する熱量があるかどうか?なのです。
そのため、アンバサダーマーケティングではアンバサダーとなりうる顧客の特定が重要になります。特定のロイヤル顧客をアンバサダーとして認定し、自社商品のフィードバックや情報発信を促すPR施策につなげる必要があるのです。
アンバサダーマーケティングを始めようと考えたとき、マーケティング担当者がきちんと押さえておくべき点は"インフルエンサー"との違いです。どちらもPR施策にはなりますが、決定的な違いがあります。
アンバサダーとインフルエンサーの最も大きな違いは、自社商品・サービスに対する立場です。
インフルエンサーは、自社商品やサービスのファンでない場合がほとんどです。インフルエンサーは多くのSNSフォロワーを抱えた宣伝力が強い著名人が起用され、収入目的で活動するというケースがよく見られます。
これに対してアンバサダーは、自社商品やサービスの熱狂的なファンになります。ブランドの顔となりうる存在なのです。自身もサービスを利用しているケースが多いため、企業よりもさらに顧客目線で商品の良さを他社に共有することができる点が特徴です。
これは、口コミや紹介マーケティングに通じる部分ですが、情報の受け手となる人々が、よりその商品やサービスを自分事として捉えやすくなることで、購入や問い合わせに繋がりやすくなります。
より多くの新規顧客を獲得し、売上が伸びていれば良しとされていた時代では、「既存顧客へのフォローアップは何もせず、TVCMを大量に投下し、新規顧客獲得に専念する」という構造が当たり前になっていました。
しかし、類似サービスが数多く生まれてきたことや、1つのニーズに対するサービス提供の形が多様化したことで、市場には「モノ、サービス」が余る状況になりました。
これにより、新規獲得だけではなく、既存顧客に継続的に自社を選んでもらうことがマーケティング上の重要課題になったのです。
そのため、LTV( Life Time Value: 顧客生涯価値) の向上が、新規獲得数と同じくらい企業にとって重要な指標になってきたのです。また、広告に対する反応も鈍くなってきていることから、口コミを投稿してもらえるような顧客との関係構築もより重要になってきています。
その結果として、ロイヤルな顧客に対して企業がお礼をするという新しい構造が生まれました。情報過多となっている状況においても既存顧客から選んでもらえる商品・サービスになるために、企業だけで物事を決めるのではなく、 実際の利用者の声を聞き、一緒に事業の方向性を決めていくという方向性になっていったのです。自社のCRM(顧客関係管理)基盤を整え、メールやアプリ、SNSへの投稿を通じてユーザーと双方向のコミュニケーションを取っていくことの重要性が増しています。
そのコミュニケーションをとるための具体的な施策の一つが、アンバサダーマーケティングです。
コミュニケーションをとるための施策としてリファラルマーケティングも有効な施策です。
本記事と合わせて、「リファラルマーケティングとは」の記事もぜひご覧ください↓
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顧客の声を商品・サービスに反映させたい場合、アンケート形式で多数のユーザーの調査を行うことが一般的です。
これに対し、ファンであるアンバサダーに対して行うのは「目の前の一人の顧客(N=1)」を徹底的に深掘りするインタビュー形式の定性調査です。多数の意見の傾向ではなく、熱意のある1ユーザーの活発な意見を深掘りすることができるため、よりターゲット顧客の目線に立ったマーケティングが可能になります。
具体的には、アンバサダーにインタビューやモニターの依頼をしてフィードバックをもらったり、時には企業の一員となって活動してもらったりといった活用例が挙げられます。
また、アンバサダーが投稿した内容に対するその他のユーザーコメントも良い情報収集源です。
コメント欄は、様々な視点からのユーザーの本音が集まりやすいため、自社内では気付くことができなかった新たな発見があるかもしれません。
関連記事:「とりあえずインフルエンサーマーケ」はNG!成功に近づく重要ポイント
「アンバサダー」となった顧客は、単に企業にお金を落とし、情報を提供してくれる存在ではありません。自社の情報を発信し、新しい顧客を連れてきてくれる存在でもあります。
アンバサダーは元々自社商品やサービスのファンであるため、ユーザー目線で魅力や特徴、使ってみた感想を積極的に、かつ熱量を持って発信してくれます。消費者が知りたい生の声として、アンバサダーの発信情報には説得力があり、受け手は信頼感を持って受け入れられます。
また、アンバサダーはインフルエンサーと異なり表立った活動をしているとは限りません。なので、身近な友人や知人に積極的にお勧めをしてくれる存在である可能性が高いです。
そのため、よりアンバサダーに近い属性の人や、自社商品やサービスと相性の良い消費者が購買を行ってくれる可能性が高まります。
結果として、よりロイヤリティを築きやすい新規顧客の獲得にもつながるのです。
アンバサダーを採用する主な目的は、見込み顧客に対して質の高い情報を発信し、その結果、見込み顧客が自分事として自社商品やサービスの中身をを捉えるようになることです。
しかしながら、自社にとって理想的なアンバサダーは、Instagramを用いたPRやイベントへの出演、新商品・サービスのフィードバック、商品の共同企画等、多岐に渡るマーケティング戦略に携わることができる存在です。
一見、アンバサダーとは自社の商品やサービスをSNSで拡散してくれる存在と認識されがちですが、それだけではかなりもったいないのです。
アンバサダーはもともと、自社商品やサービスに対しての熱量がありロイヤリティの高い顧客です。そのユーザーから発信される情報は、PRの目的だけではなく、商品やサービスの改善・差別化ポイントの把握など、さらに多くのユーザーに自社のブランドを好きになってもらうために必要な情報の源になりえます。
アンバサダーからのフィードバックや企画に対するアイデアが自社商品やサービスに反映されることで、さらに多くのファンを集めるきっかけになります。
そのため、自社のアンバサダーをきちんと特定し、能動的なコミュニケーションを取っていくことが重要なのです。
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アンバサダーマーケティングのメリットを伝える中で、アンバサダーを特定することの重要性もお伝えしました。
しかしながら、質の高いアンバサダーを見つけることは難しく、企業によっては立ち上げに時間がかかる場合もあるというデメリットがあります。
なぜなら、自社がかかえる顧客の様々な行動をきちんと把握し、分析する必要があるからです。
すでにアンバサダーマーケティングを実施していても、自社への貢献度が高いアンバサダーを判定し、施策に落とし込んでいくことはコストや労力を必要とします。
アンバサダーマーケティングを取り組むにあたっては、アンバサダーとなりうる顧客を特定するための環境、CRMの活用が重要になってきます。
さらに、どのような顧客をアンバサダーとするかの定義が必要なのです。
アンバサダーは、一度見つけられればそれで終わりという存在ではありません。
アンバサダーマーケティングを成功を収めている企業ほど、アンバサダーの選定に時間をかけ、アンバサダーと積極的なコミュニケーションを取っています。そのうえで、アンバサダーとともに様々な企画を立てたり、イベントを開催したりと精力的に施策を運用しています。
質の高いアンバサダーに出会えたはいいものの、アンバサダーが自発的に行う情報発信だけに頼っていては、アンバサダーマーケティング本来の効果を実感できずに終わってしまうかもしれません。
また、アンバサダーが自発的に発信している内容がステルスマーケティングとユーザーに捉えられる可能性もあります。
そうなると企業の信用力は一気に落ちるため、発信人物や内容、企画など深くまで考える必要性がでてきます。
そのため、アンバサダーを特定するだけではなくコミュニケーションをとること、実際に施策を運用することが重要になってくるのです。
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特に大手の企業様に多いのが「アンバサダー特設ページ」を用意し、アンバサダー募集のキャンペーンを行うケースです。アンバサダー募集のコミュニティページやメルマガがあり、それをきっかけにアンバサダー向けの呼びかけを掲載していく方法です。
このやり方は熱量の高い顧客が多く集まるという利点があり、本格的に取り組めば実りは大きいでしょう。
一方、担当をつけて準備や運用をしっかり継続して行なわなければ、思ったほどのマーケティング効果は出づらいかもしれません。
また、公募というハードルがあるためしっかりキャンペーンプロモーションをしなくては母数が集まりづらいです。このため、公募形式は特に大規模企業様で用いられる傾向にあります。
アンバサダー公募のメリット:
アンバサダー公募の注意点:
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アンバサダー公募制度よりさらにライトにする方法として、ファンミーティングなどのイベントの実施があります。イベントに来てくださる顧客はある程度ロイヤル度が高いと考えられるので、イベント来場者に声をかけてアンバサダーとして動いてもらえるかどうか直接的に働きかけてみることができます。
公募制度より手軽かつ母数が集められることが大きなメリットですが、一方でよくある勘違いはロイヤル顧客=アンバサダー顧客とは限らない、ということです。
単に長く商品を使っていたり、愛着度が高いからといって、その顧客が積極的に発信し、改善点についてフィードバックしてくれるとは限りません。
もしアンバサダー起点の質の高い発信を重視しているならば、イベントでは成果が出にくい可能性もあります。
イベントのメリット:
イベントの注意点:
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紹介(リファラル)マーケティング施策と同時に実施できるので公募制度より簡単に実施できますし、実際に商品を周囲に紹介している顧客ですので、発信力も高いことが推測されます。
一方で、紹介キャンペーンとアンバサダー制度がうまく共存するためには、お得訴求にならないようなインセンティブ設計に加え、誰が何人紹介できるかを把握するための計測制度も自社で準備が必要です。また、「単にお得になるため」だけに多人数を紹介している顧客にオファーを出しても、アンバサダーの質が落ちるだけでなく、オファーを断られる可能性もあります。
そのため紹介キャンペーンとの併用を行う際は、商品へのそもそもの愛着度が高めであることも確認することが必要です。
紹介(リファラル)併用のメリット:
紹介(リファラル)併用の注意点:
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アンバサダーマーケティングの実施にあたっては、アンバサダーの選定方法がとても重要です。
一般的には、候補となるユーザーのフォロワー数・エンゲージメント率・コメントの質などが目に見えて分かりやすい指標として扱われています。寄せられたコメントに対して返信をしているユーザーにはすでにコアなファンが付いていることがありますので、有力なアンバサダー候補となるでしょう。
一方、良く陥りがちなのが上記のような指標評価が先行してしまい、本質的な評価軸を見失ってしまうことです。
繰り返しになりますがアンバサダーは、自社商品やサービスに対してい質の高い情報発信を行っているユーザーであることが重要です。
仮に、数十万人のフォロワーを保有し、平均100の「いいね!」が付くユーザー(反応率が0.1%)と、1万人のフォロワーを保有し、平均1,000のいいね!が付くユーザー(反応率は10%)がいた時、質の高さで見ると後者のユーザーの方がアンバサダーに相応しいといえます。
では、後者のユーザーが自社商品やサービスに対して大した愛着を持っていない場合はどうでしょうか?該当ユーザーとの継続的な関係構築ができない可能性が高いだけでなく、ブランドに対しての理解も浅いため、最悪の場合自社商品やサービスの価値を損ねることに繋がりかねません。
このような結果は、アンバサダーマーケティングの本来の目的からそれてしまいます。
そのため、アンバサダーを選定するための基準・本質的な指標の設定がとても重要です。指標の設定に向けては、LTVや紹介を行った回数、ならびにCV数など見るべき指標が複数存在するため、事前に選定基準を明確に設定しましょう。
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アンバサダーマーケティングを成功させるためには、「ただファンにお願いする」だけではうまくいきません。適切な準備と戦略、継続的な改善によって、はじめて成果につながります。
ここでは、効果的なアンバサダーマーケティングの6つの導入ステップをご紹介します。
アンバサダーマーケティングの導入でまず重要なのは、「何のために実施するのか」を明確にすることです。
目的によって、施策の設計やKPIが異なります。
例えば、
・CPA(新規顧客獲得コスト)の削減:紹介からのコンバージョン率や獲得単価
・UGC(ユーザー生成コンテンツ)の増加:SNS投稿数やエンゲージメント数
目的を曖昧にすると、施策の評価基準も定まらず、成果の振り返りや改善が困難になります。
具体的な数値目標(例:紹介率〇%、UGC数〇件)を設定し、プロジェクトメンバー全員で共有することが成功の第一歩です。
次に、「誰にアンバサダーを依頼するのか?」を決めます。
アンバサダー選定は施策の成否を左右する重要な工程です。単にフォロワー数の多いインフルエンサーを選ぶのではなく、「熱量」と「共感力」が高い人を見極めることが鍵となります。
以下の選定基準を参考にしてください。
- 継続利用している(=LTVが高い)顧客
- SNSでの発信が活発(フォロワー数より“熱量”重視)
- 口コミ投稿歴がある(レビュー・アンケートなど)
また、アンバサダーの発見には、SNS上でのハッシュタグ検索、LINEやメールでのスカウト、顧客満足度調査(NPS)を活用することが有効です。理想のアンバサダーを定義し、彼らが活動しやすい環境を整えることが、プログラムの成功に直結します。
アンバサダーとなる対象が決まれば、次はアンバサダーが「活動したくなる」仕組・プログラムの作成に移りましょう。
ポイントは、アンバサダーの熱量を高めるプログラムを設計することです。
プログラム設計のポイント:
- “特別感”と“継続した動機づけ”を意識する
- 金銭報酬に加え、限定ノベルティ・表彰制度なども有効
アンバサダー活動は対価を支払わないボランティア活動ではありません。とはいえ、必ずしも金銭的報酬が必要なわけでもありません。金銭的な報酬だけでなく、限定グッズのプレゼント、表彰制度、特別なイベントへの招待など、心理的報酬を組み合わせることが有効です。
重要なのは「特別感」と「継続的なモチベーション維持」です。例えば、「今月の優秀アンバサダー」に選ばれると特典がグレードアップする仕組みを設けると、活動の活性化につながります。
アンバサダーにとって魅力的かつ健全なプログラムを設計しましょう。
プログラムの方向性が定まったら、アンバサダーがスムーズに紹介・発信できるよう、専用ページやクリエイティブ素材の整備を行いましょう。アンバサダー専用URLや招待コードを案内し、参加手順を図解でわかりやすく説明することがポイントです。
また、SNS投稿用のテンプレートや推奨ハッシュタグ、投稿ルールや禁止事項を前もって用意しておくことで、参加者が迷わず行動できるようにし、ブランドイメージの統一とリスクの軽減を図れます。たとえば、専用ページに「こんな紹介文でOK」「このハッシュタグを入れて」など具体例を掲載すると、参加者にとって親切です。
さらに、ページのデザインも重要です。ブランドカラーやロゴを効果的に取り入れ、視覚的に訴求力の高いページを準備しましょう。
▼準備するもの
- アンバサダー専用ページ
- 紹介の流れをわかりやすく説明する図解
- 紹介文テンプレートやハッシュタグ案
- 投稿ルール・禁止事項のガイドライン
施策実施後は、定量的なモニタリングを行い、成果を可視化する仕組みを準備しましょう。
どの施策が効果的か、どのアンバサダーが高いパフォーマンスを発揮しているのかを正確に把握することで、次回以降の施策改善や継続的な運用に活かせます。
モニタリング項目(例):
- 紹介URLのクリック数…どれだけの流入があったか
- 成約数…アンバサダー経由のコンバージョン数
- 投稿数…SNS、ブログ、口コミなどの発信量
- 投稿内容のエンゲージメント…いいね数、保存数、コメント数、リーチ数
成果の数値だけでなく、どのような投稿がブランドイメージやユーザー共感を引き出しているかを分析することで、次の施策に向けたクリエイティブやメッセージの改善点も見えてきます。
これらの情報をもとに、アンバサダープログラムのPDCAサイクルをしっかり回していくことが運用のポイントです。
アンバサダーマーケティングは一度で終わるものではなく、継続的な取り組みが求められます。
活動のモニタリングと成果を可視化以外にも、定期的にアンケートを実施して参加者の声を収集し、テンプレートやインセンティブの改善、対象者セグメントの見直しを行い、常に新鮮さと魅力を保ちましょう。
改善の具体施策:
- 投稿テンプレートの改善
- 特典のA/Bテスト
また、アンバサダーのモチベーション維持のため、月次ランキングや表彰制度、活動履歴に応じた特典アップ、オンライン勉強会や座談会の開催といったプログラムの実施も有効的です。
施策の改善を重ね、長期的に「愛されるアンバサダー制度」を築いていきましょう。
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アンバサダーといえば、テレビCMでもお馴染みのネスカフェ。マシン利用料0円で職場にコーヒースペースを設けることができるサービスを展開しています。ネスカフェで採用されているアンバサダー制度はいわゆる一般的な「アンバサダーマーケティング」とは少し異なり、職場にネスカフェを導入した顧客全員を「アンバサダー」と呼称しています。
ネスカフェのアンバサダー制度の面白い点は、企業が場を設けなくても、アンバサダーが自然と集まり、アンバサダーコミュニティが自然と発生していることです。
その点に関して、津田氏は下記のように仰っています。
テレビでのプロモーションも行っていますが、最も多いのは口コミを経由してのものです。認知は高まっていて、なんとなくは知っていたが、周囲の人に聞いてぜひやってみたいと思った、という声が多いです。評判が、応募を呼んでいるということです。
それだけに、サービスの中身がますます大事になっていると考えています。アンバサダー同士の自発的なつながりも、たくさんあるようです。フェイスブックやLINEのグループもあったりします。
企業の「アンバサダー募集」の働きかけをきっかけに、アンバサダー同士で自発的に繋がり合い、ネスカフェの輪が広がっています。ネスカフェではこのような自発的なコミュニティ拡大を狙い、ネスカフェアンバサダーご紹介キャンペーンも実施しています。
カルビーの「じゃがりこ」は、会員制ファンサイト「それいけ!じゃがり校」を2007年〜2021年3月31日(水)に運営。コンセプトは「学校」で、新規会員は毎年12月から2月頃に募集され、「入試」に合格したユーザーだけが毎年4月〜「入学」できるクローズドなコミュニティでした。
「じゃがり校」の活動で最もリターンが大きいのは商品企画開発への参加です。例えばテスト販売中の商品を生徒に試食してもらい意見を反映した商品販売サイクルは、近年の「じゃがりこ」ほぼすべての商品に適用されているとのこと。さらに毎年「じゃがり校」生徒と1年間かけて1つの商品をつくりあげる「新商品開発プロジェクト」はコミュニティの最大行事となっています。
それに関して、カルビーマーケティング本社課長 松井氏は下記のように語っています。
(試食アンケートについて)みなさん、自分でお金を出して買っていらっしゃることもあり、本当に正直に答えていただけます。
大変興味深いのが、売上との関係です。「じゃがりこ」は、ほぼ毎月新しい味を発売しているのですが、「じゃがり校」でファンとの共同で開発した商品が、新フレーバーの中で年間トップの売上を記録することも多いのです。
なんと、テスト商品の購入費用は自腹!だからこそ調査会社経由のマイルドな意見ではなく、じゃがりこが好きなユーザーの生の声を集めることで、本当にユーザー視点に立った商品を開発できていたのです。
現在「じゃがり校」は閉校。その理由は「SNSを使ったオープンなコミュニケーションがマーケティングの主流になっていること」「ユーザー発信のコンテンツ(UGC)の方が共感を呼びやすい」ことだそうです。
現在じゃがりこは、公式WEBサイトと公式Twitterでユーザーに情報発信しつつ、これまでの企業主体のコミュニティづくりから、ユーザー主体発信の方向性へ転換を始めています。「じゃがり校」での熱量が今後どのように形を変えるのか、動向が注目されます。
コンピュータ関連製品販売のDELL(デル)は2016年より、DELLアンバサダー登録申し込みをしたユーザーに対して特別オファーや座談会などの各種案内を提供しています。
DELLのアンバサダー制度で特徴的なのは、積極的に製品無料モニター体験やイベント招待の機会を設けているところです。製品への感想は、社員との少人数座談会や記事などの形で発信され、リアルな声としてフィードバックや見込み顧客へのアピールに繋がっています。
実は、アンバサダープログラムを始めてからは、お金を払う記事はやめたんです。今は、アンバサダーに書いてもらう記事と報道メディアによる記事だけに絞っています。アンバサダーの方々が書く記事は、お金を払って書いてもらう記事と違って、どれだけその製品やデルが好きなのかといった個人の気持ちが入っています。
彼らの言葉には嘘がなく、熱意であふれていますので、それが説得力を生み出しているんだと思います。
CPUメモリなどの部品や機能、デザイン等での大幅な差別化が難しいコンピュータだからこそ、座談会などを通してDELL製品だけでなくDELL社員や企業風土、哲学にも親近感を持ってもらい、自然発生的なアンバサダーの輪の拡大を狙っているところがポイントです。
DELLもネスレ日本と同じくアンバサダー紹介制度も実施しており、アンバサダーが次のアンバサダーを生む仕組みを用意しています。
上記3社中2社は、アンバサダーを集めるために「紹介制度」「紹介キャンペーン」を活用していました。一方で、紹介キャンペーンをトリガーにしてアンバサダープログラムを実施している例も見受けられます。
例えばある化粧品定期購入サービスでは、紹介キャンペーンを下記の通り実施しています。
招待したお友達が製品を定期購入すると
招待したお友達3人以上が製品を定期購入すると
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つまり「紹介キャンペーン」を通して、商品を積極的に発信し効果の高い口コミをしているユーザーを特定し、製品への意見を聞くという方法です。
ユーザーが自発的にアンバサダーとして応募するのではなく、「発信する」という行動の結果としてアンバサダーに認定される仕組みになっているので、より発信力のあるユーザーを把握しアタックできるという点がポイントです。
また、紹介キャンペーンと同時に実施することができるので、まず自社にどれくらいのアンバサダーがいるのかクイックに把握したい企業には特にお勧めの方法です。
ちなみにこちらの企業様は年間WEB広告予算数億円と広告マーケティングにかなり力を入れていらっしゃいますが、アンケートの結果、商品の購入動機の約半分は「友人・知人からの紹介」だったという事実が判明しました。まずは自社でどれくらい紹介が起こっているのかを把握した上で、紹介を起点としたアンバサダーマーケティングを実施してみるのも良いかもしれません。
ワークマンといえば土方系の作業員がメインでしたが、今は一般の女性客も売上に貢献しています。顧客層が拡大している背景には、株式会社ワークマンの専務取締役である土屋哲雄氏が「戦略目標は客層拡大の一つでしかない」と言っているほど、この一点を大切にしている点があります。商品を「丈夫」の観点で見ると土方がメインになりますが、「機能性があり、安い」と捉えるとユニクロ購入層もターゲットに入ります。
このようにアンバサダーマーケティングに関しても、客層拡大の戦略目標を達成するための一つにしか過ぎないと語っており、質の高いアンバサダーを集める仕組みを構築しています。
ワークマンのアンバサダーマーケティングが成功しているポイントは下記の要素が考えられます。
①精度が高いアンバサダーの選定 ワークマンでは、誰でもアンバサダーになれるわけではありません。しっかりと自社の商品を発信してくれる人かどうか、それに加えて、それぞれが何かの分野に選定には時間をかけています。 結論から申し上げると、ワークマンのアンバサダーへの報酬は無償です。 |
株式会社ヤマダデンキの大塚家具事業部は、家具・インテリアの専門店として、高品質なアイテムを取り揃え、ユーザーのライフスタイルに寄り添った商品を提供しています。そんな大塚家具が展開する「IDC OTSUKA 暮らしを愉しむアンバサダー」は、新作ポータブルライト「SERA(セラ)」を通じて、暮らしをより豊かに彩る商品の魅力を広めるアンバサダーマーケティング施策です。
Instagramを活用し、一般ユーザーの視点から「SERA」を紹介することで、SNSを通じたリアルな利用シーンの共有を広く伝えることが可能です。
本施策の特徴は、他のアンバサダー施策と比べて、条件や活動内容が比較的豪華かつ盛りだくさんで、充実した内容となっています。
応募条件: ・Instagramアカウント公開設定で投稿している方 |
活動内容: ・「SERA」を使った写真や動画を月1回以上投稿 |
この施策は、SNSを通じて一般ユーザーのリアルな声を届けることで、企業アカウントと連動した自然なプロモーションを生み出しています。インフルエンサー頼みではなく、実際に使った感想や日常での活用シーンをシェアしてもらうことで、より共感を呼びやすい内容となっています。
Metagri(メタグリ)研究所は、株式会社農情人が運営する研究機関です。農業とは一見無縁に思える先端テクノロジーを積極的に取り入れ、新しい農業の形を模索しています。
2025年は「最新テクノロジーの力で、農業をもっと身近に、もっと楽しく」というミッションをもとに、農業や地域活性化に関心を持ち、積極的に挑戦したい大学生・大学院生を対象に、農業の魅力や可能性を伝えるアンバサダープログラムを展開しています。
アンバサダーに選ばれると、Metagri研究所の活動を広報する役割や、農業や地域活性化に関するプロジェクトに参加する機会が与えられます。この施策の魅力は、参加者自身が主体的に情報発信やプロジェクト運営に携われる点です。特に学生にとって、全国の革新的な農家、多様な専門性を持つ社会人とともに活動できることはかなり貴重です。実践的なスキルを習得し、地域社会への貢献を実感できるこのプログラムは、農業や地域活性化に少しでも興味がある学生にとってかなり魅力的ではないでしょうか。
アンバサダープログラムの参加者への特典
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東レ株式会社は、家庭用浄水器ブランド「トレビーノ®」を展開する日本有数の大手化学メーカーです。水の安心・安全を支える製品を長年にわたり提供し、家庭の飲料水をより清潔かつおいしくする浄水器を開発しています。
2025年4月から「トレビーノ アンバサダー」を募集し、トレビーノの魅力をSNSを通じて発信する方を対象に、公式アンバサダーとして製品を無料提供し、その使用体験をInstagramで共有してもらう施策です。
この施策は、アンバサダーに実際の製品を提供することで、製品の使用体験を通じた自然な発信を促進し、製品価値のリアルな認知拡大を図る点が非常に有効です。一般の消費者が自発的に製品の魅力を伝えることで、企業発信だけでは届きにくい「リアルな声」を収集することができます。
また、SNS上にアップされている日常生活の中で「トレビーノのある暮らし」を具体的にイメージできる写真や動画は、ブランドにとって強力なUGCとして活用可能です。これらのUGCは、アンバサダー自身のInstagram投稿を通じて拡散されるだけでなく、公式アカウントでのリポストや自社メディアでの紹介も可能なため、ブランドのSNS展開を一層強化します。
SNSを活用したアンバサダーマーケティングは、親近感のあるブランドイメージを築き、既存ユーザーや潜在顧客の購買意欲を高める効果が期待されます
アンバサダー応募方法: |
参加特典: |
子供服ブランド「arisana(アリサナ)」は、品質とデザインに優れた子供服を幅広く取り揃え、特にフォーマルやカジュアル、浴衣など多彩なラインアップが人気を集めています。そんなarisanaでは、ブランドの魅力をSNSで発信してくれる「第3期公式アンバサダー」および「浴衣モニターモデル」を募集しています。
アンバサダー:活動期間中(約5ヶ月間)毎月1点提供されるarisanaのアイテムをInstagramに投稿し、その魅力を発信する役割 モニターモデル:提供された浴衣を着用し1回だけ投稿すれば、人気の浴衣をプレゼントとして受け取れる |
アンバサダー特典としては、提供される商品に加えて、投稿のリポスト数に応じた追加プレゼントや、公式SNS・サイトでの紹介、さらには商品モデルとしての起用チャンスも用意されています。
「アンバサダーはちょっとハードルが高い」と感じる方でも、「モニターモデル」で気軽に参加できる仕組みが整えられているのも嬉しいポイントです。これからモデル活動を考えているお子さんや保護者の方にとっては、挑戦しやすい機会と言えるでしょう。
いずれの施策も、子供たちの自然な笑顔やリアルな着用感を伝えることで、ブランドの信頼度向上につながる内容です。SNSを活用したUGCの好事例として、他社施策にも参考になるポイントが詰まった内容といえるでしょう。
応募条件: |
ホテル・ロッジ舞洲は、大阪市此花区に位置し、海と森に囲まれた自然豊かなリゾート施設です。2025年の大阪・関西万博を見据えたプロモーションの一環として、同施設では「エシカルリゾート」の実現を目指し、アンバサダーマーケティングを実施しました。
アンバサダーによるSNSでの発信を通じ、エシカルなリゾートとしての魅力を多くの人に広めることを目的としています。
特典として、1泊2食付きの無料宿泊体験(最大4名まで)を提供。大阪湾の夕景を背景に、自然に囲まれた非日常空間を楽しめる特別な体験が用意されています。特に「日本夕陽百選」にも選ばれた絶景を背景にした体験は、多くの人々にシェアしたくなる魅力です。
さらに、宿泊体験だけではなく、アンバサダーには宿泊後に座談会にも参加いただきます。
この座談会では、実際の体験を通じた率直なフィードバックを集め、今後のサービス改善やブランド認知度向上に活かすことができ、参加者の声を重視したサービス向上の好循環を生み出すことが可能です。
SNSを活用した参加型の仕組みは、より多くのターゲット層へのリーチを実現し、ブランドの魅力と価値向上に繋げることができます。
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SNSが普及した現代において、会社やブランド、商品やサービスに対するファンを増やし、ファンを起点にマーケティングを組み立てる企業が多くなっています。既存のお客様を大切にするだけでなく、ファンである顧客とのコミュニケーションをとり事業の発展に繋げるための仕組みがアンバサダーマーケティングです。
良質なアンバサダーと出会うためには、自社の顧客と向き合い、顧客がどのような行動をとっているか?などを理解するとともに、様々な既存顧客向けの施策を実施しながら、コミュニケーションを継続的にとることが重要です。
効率よく、質高く事業を拡大していくためにも、顧客起点のマーケティングやアンバサダーマーケティングの実施を検討してみてはいかがでしょうか。
invyは、紹介(リファラル)キャンペーンの活用をご支援するツール/サービスです。
本記事でご紹介したように、アンバサダーとなり得る優良な顧客の特定も可能な仕組みや、リファラルマーケティング×アンバサダーマーケティングのキャンペーン設計ご支援も行っております。
本記事で、アンバサダーマーケティングやリファラルマーケティングに関心を持っていただけた企業様は、ぜひお気軽にまずは無料相談からお問い合わせください。
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最後に、アンバサダーマーケティングの導入や運用にあたって、よく寄せられる質問をまとめました。
実施前の不安や疑問を解消する参考にしてください。
アンバサダーは一時的なPRではなく、長期的にブランドと関わり、信頼関係を築きます。そのため、アンバサダーの声はより自然で説得力があり、顧客の共感を得やすいというメリットがあります。アンバサダー:ブランドに強い愛着や信頼を持ち、商品の魅力を自発的に広めてくれるファン
インフルエンサー:報酬を受け取ってPR活動を行うことが多く、フォロワー数や拡散力に重点を置いて選出される
アンバサダーは、ブランドへの愛着や信頼性、商品の使用履歴、SNSでの発信力、ターゲット層との親和性などを基準に選出するといいでしょう。フォロワー数の多さだけでなく、日常的にブランドに関わりを持っているか、または顧客として商品を利用しているかを重視することで、無理なく自然にブランドの魅力を広めることが可能となります。
モチベーション維持には、定期的なコミュニケーション、活動実績に応じた特典の付与、ランキングや表彰制度の導入が有効です。
例えば、月ごとの「ベストアンバサダー」発表や、活動量に応じたポイント付与など、楽しみながら活動できる工夫を取り入れましょう。また、アンケートやヒアリングを通じて意見を集め、アンバサダーの声を反映することで、主体的な参加意欲を高められます。
特典は、ブランドのイメージや予算、アンバサダーのモチベーションを踏まえた設計を推奨しています。
例えば、商品・サービスの無償提供、限定イベント招待、ポイント付与、割引クーポン、活動実績に応じたランキング報酬などです。また、アンバサダーの活動量や影響力に応じたインセンティブ設計を行うことで、より多くの投稿や高品質な発信を促すことができます。
購入や申し込みなどの取引に応じて特典を提供する場合、それが景表法上の「景品類」に該当する可能性があります。一方、単なる謝礼(アンケート協力など)としての支払いは景品表示法の対象外となる場合もあります。特典内容を決定する際には、取引条件や対象を整理し、法律の適用範囲を明確に把握することが重要です。
景表法について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
>>景品表示法とは?紹介キャンペーン実施時に注意すべき3つのポイントを分かりやすく解説
ガイドラインは、ブランドの世界観や投稿品質を維持するために必要ですが、細かすぎるとアンバサダーの自発性を阻害します。
投稿の基本ルール(例:ハッシュタグの使用、推奨する写真の雰囲気、禁止表現など)を明確に伝えつつ、創意工夫の余地を残すことが大切です。アンバサダーには「自分らしさ」を活かした投稿をしてもらい、ブランドとの一体感を演出しましょう。
成果が出ない場合は、まず投稿内容や特典内容を見直し、アンバサダーの選定基準や対象層を再検討します。ガイドラインが厳しすぎる、特典が魅力不足、募集方法が不十分、コミュニケーション不足などの要因を特定し、改善策を講じることが重要です。
また、アンバサダーや顧客からのフィードバックを取り入れ、次回の施策に反映させることも改善においては重要なポイントとなります。
ブランドや企業のアンバサダーになるには企業発のセミナーやアンバサダー募集ページ、説明会などに応募するか、または事務所に登録して情報を待つという方法があります。 しかし、ワークマンのように公式で募集せず、スカウト形式を取っているところもあるので、企業によって、アンバサダーになる方法は多種多様と言えます。そのため常に企業の動向を追うのが最善です。
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