B2Bビジネスにおけるリファラルマーケティング
B2Bビジネスでも有効なのか?リファラルマーケティング
リファラルマーケティングは、B2B領域においても既存顧客のCRMを通じて新規顧客を増やすための強力な施策です。しかし、まだまだ積極的にプログラムを運営している企業様は多くはありません。よくお問い合わせいただくところで、B2Bにおけるリファラルプログラムは、効果あるのか?どうなのか気になる方は多いのではないでしょうか?
ご存じの通り、B2BビジネスはB2Cとは違って検討プロセスに複数の関与者が存在し、決済・承認などのプロセスを必要とします。
商材に依りますが、1次選定・2次選定と絞り込みプロセスがある中で、買い手は意思決定プロセスの60%を営業担当の接触前に済ませているといわれています。B2Bマーケティングに取り組む方であれば誰しもが一度は聞いたことがある数字だと思います。
(出典:CEB, “The Challenger Sale,” 2011)
だからこそ、B2Bビジネスにおいても「the MODEL」に注目が集まるとともに、デジタルマーケティングに力が入れる企業が増えています。その背景には、B2Bビジネスにおいて買い手側企業の情報収力は高まっているためです。
買い手側企業の担当者は、営業と会う前にある程度「購入する / しない」の意思決定を済ませているということですが、そういう意思決定の裏側には、早い段階での買い手と接点を持つ企業が多くいるということです。いかに早い段階で接点や関係値を作れるかがとても重要かというところになります。
アメリカでのB2Bマーケティングについてのデータを調べてみると、その中にはとても役立つリファラルマーケティングの統計データがありましたので、今回はそれを紹介していきたいと思います。
B2Bマーケティングにおける課題は、リードジェネレーションとリードナーチャリング
B2Bビジネスのマーケターにとっての最大の課題は、リードジェネレーション(トラフィックとリードをあつめること)です。いかにターゲット市場の顧客との出会いの場を演出できるかがです。
そして、もう一つ重要になってくるのがリードナーチャリングです。 The Marketing Blenderのデータによるとナーチャリングされたリードは、ナーチャリングされていないリードよりも47%多く購入するそうです。
(https://www.themarketingblender.com/statistics-boost-sales/)
売り手側のマーケターにとって、売り上げに貢献するためには、如何に獲得したリードを丁寧に育てて、SQLにしていくか=リードマネジメントを実施するかがB2Bマーケティングではとても重要です。
しかし、そういうことを実施するためのマーケター人材の確保や育成がどの企業でも課題となっています。そのような経験をもっている人財は日本には多くはいません。だからこそ、我々のような会社にご相談が増えているのではないでしょうか。
また、この部分をずっと外部に依存し続けるにはいかないわけですから、社内で取り組める人財を育てることは営業現場の人財が老化している企業ほど経営課題に直結するのではないかと思います。この辺については別の機会に掘り下げてお話しできれば幸いです。
売り手も買い手もWeb広告が最適な手段だと思わない。
・B2Bサービスの買い手企業側の決裁・意思決定者のほぼ83%が、 B2Cマーケティングのようにリードジェネレーションにおけるコミュニケーションはよりクリエイティブな手段になることを望んでいる。
・買い手企業の48%は、SNSを通じたWeb広告が過度に繰り返されることに飽きている。
(Small Biz Trends 2019:https://smallbiztrends.com/2019/03/b2b-marketing-statistics.html)・現場にいるマーケターのほぼ3分の1は、B2Bサービス各社はWeb広告に力を入れているが、有料広告が最も過大評価されているマーケ手法だと考える。その理由として、施策に対してかけているお金と時間とリソースに対して費用対効果が見合わないから。(hubspot 2017:https://blog.hubspot.com/marketing/state-of-inbound-stats)
・89%のB2Bマーケターは、最も効果的な手法として「顧客の声」を活用したコンテンツマーケティングであると考えている。
(iron paper:https://www.ironpaper.com/b2b-content-marketing/)
この結果を見てみると、買い手・売り手企業側も広告に対して無関心=B2Bマーケティングの広告効果がいかに低いかを示しているように見えます。言うならば、売り手企業側は広告ではない手段や手法を求めつつ、買い手企業側は経路でのサービスとの出会い(=リファラル?)を求めているといえるのではないでしょうか?
企業からの直接の売込みは、信用・理解されない
売り手企業から伝えられることの多くは、情報量が多く本当に知りたいことを知ることができなかったり、ソモソモ売り手企業側も買い手側の企業ニーズや課題把握をできていないことが散見されます。われわれコンサルティングしている企業だと肌感をもって感じられるのですが、システムベンダーはツールを売り込むことに執着しており、その企業が実現したいことは横に置いておきがちです。
・買い手企業の63%は、売り手企業の提案やアピールを3〜5回聞かないとその情報を信じる=理解することができない。
・コールドコールの2%のみがMTGのアポイント取得につながっている。(つまり、コールドコールの失敗率は98%)
(The Marketing Blender:https://www.themarketingblender.com/statistics-boost-sales/)・SQL客とつながるには18回以上の電話が必要で、それに対するコールバック率は1%未満。
アウトバウンドのセールスメールは24%しか開かれない
(ハーバードビジネスレビュー:https://hbr.org/2016/11/84-of-b2b-sales-start-with-a-referral-not-a-salesperson)・89%の買い手企業の意思決定者にとって、「第三者情報」は、購入の意思決定に大きく影響を与える。
(avanade:https://www.avanade.com/-/media/asset/point-of-view/the-new-customer-journey-global-study.pdf)
売り手も買い手もクチコミが重要な情報だと考える。
次に見るのがB2Bビジネスにおける、クチコミについての調査データです。どの調査結果においても当然ながらクチコミの重要性を謳う結果となっています。
・91%の買い手企業は、口コミの影響を受けている
(Useful Social Media:https://www.usefulsocialmedia.com/brand-marketing/how-social-media-amplifies-power-word-mouth)・61%の買い手企業は、同業や同僚からのレコメンド・紹介が購入の意思決定に左右する最も重要な情報となる。
・88%の買い手企業は、サービスに関わる情報とアドバイスを得る方法として口コミ(オンライン・オフライン問わず)に依存している。
(Capterra:https://blog.capterra.com/b2b-marketers-double-down-referral-marketing/)
全米の600人を超えるB2Bサービス企業(売り手側)の営業、マーケティング、運用、経営幹部に対するリファラルの重要性に関する調査(HeinzMarketing社とInfluitive社)では下記のような結果が出ています。
・65%の売り手企業は、リファラル・紹介は「自社サービスの販売のために非常に重要」であると感じている。
・50%以上の売り手企業は、セールスパイプラインの維持や営業活動にリファラルは非常に効果的であると感じている。
・68%の売り手企業は、リファラルプログラムが「効果的」または「非常に効果的」であると認識している。
・しかし、約30%の売り手企業しか正式なリファラルプログラムを持っていない。
(Influitive:https://influitive.com/blog/infographic-17-stats-about-b2b-referrals-you-should-know-but-probably-dont/)
B2Bのリファラルプログラムを実施することは、売り手にも買い手にとってもとても有効なマーケティングの施策であるデータといえるのではないでしょうか?リファラルプログラムをやらない理由はどこにもないようにお見受けします。
B2Bリファラルマーケティングが強く評価される理由
では、B2Bにおけるリファラルマーケティングにおいて、どのようにクチコミを利用すればよいのでしょうか?
その答えとしておつたえできることは、紹介・オススメするプロセスをいかに簡単に・形式化できるかが重要になります。リファラルプログラムは、既存顧客や見込み顧客(必ずしも契約してなくてもOK)があなたのブランド(プロダクトやサービス)を他の会社の社員や決裁者にオススメする機会ときっかけをつくります。
そして、そのリファラル行動に対して企業や個人にインセンティブや報酬を与えます。 一方で買い手企業は、新たなサービスを利用することに対する失敗を恐れるため、「利用者のリアルの声」や「活用事例」を重要視します。
そのためより、リアルなリファラルは最も価値があります。そういう声から発生したリードの育成はより容易で、売上に直結する可能性は高くなります。
既存顧客のリファラルによって生まれるリードは、ナーチャリングされたリードよりも価値が高い
下記のデータはリファラルで創出した取引についてのデータを紹介しているものです。当然ながら?ですが、いい口コミから生まれたリードの顧客価値は、他チャネルから創出するものよりも高いものとなっています。
・リファラル経由リードは購入・契約する可能性は4倍高くなる。
・リファラルを実施した顧客のLTV(ライフタイムバリュー・生涯価値)はしていない顧客よりも16%高くなる。
(DCR Strategies:https://www.trucashuniverse.com/26-stats-prove-referrals-important-2/)・買い手企業の意思決定者の84%は、リファラルからの購入プロセスの開始を望んでいる。
・リファラルプログラムを活用したビジネスの86%は、活用できていない企業よりも過去2年において収益を伸ばしている。 (Influitive:https://influitive.com/blog/infographic-17-stats-about-b2b-referrals-you-should-know-but-probably-dont/)
企業のエグゼクティブは、紹介に絶大の信頼をおく
そして、立場がより高い人ほど、紹介経由での出会いをとても重視する傾向にあります。また、自身が信用する情報ソースからの情報を重視する傾向にあります。
・エグゼクティブの73%は、知り合いから紹介された営業担当者と仕事をすることを好む。
・エグゼクティブの76%は、知り合いからオススメされたベンダーとパートナーシップを組むことを好む。
(IDC:https://business.linkedin.com/content/dam/business/sales-solutions/global/en_US/c/pdfs/idc-wp-247829.pdf)
紹介経由の顧客はリードタイムが短く、CVR・LTVも高い
・売り手企業の営業担当者の56%は、リファラルはビジネスにとって「非常に重要」であると考えている。
・売り手企業の営業担当者の87%・営業リーダーの82%・マーケターの78%は、紹介が営業の成功に不可欠であると考えている。
・売り手企業の営業担当者、セールスリーダー、マーケターの59%は、リファラルで獲得した顧客のLTV(ライフタイムバリュー・顧客生涯価値)最も高いと考えている。
(Influitive:https://influitive.com/blog/infographic-17-stats-about-b2b-referrals-you-should-know-but-probably-dont/)
営業担当・マーケターの多くは、リファラル経由の顧客の方が他のチャネルよりも紹介からCVRが高く、高い確率で契約されると考えられています。リファラル経由のリードは他チャネルよりもクロージングするのにかかるリードタイムが短くなると言っており、より早くクロージングできる顧客として重要視されています。
B2Bマーケにおいて「パートナー化」がとても重要
そのため、難しいSaas企業とかは、私どもようなコンサルティング企業をパートナーやインプリメンテーションにアサインすることで企業が望むこと・意向を組める体制づくりを設けています。
その裏側には、買い手企業の意思決定者は「第三の声」を重視する点があるためと考えられます。買い手企業の多くは売り手企業の営業部隊と接する前に「第三者の意見や声」を情報として求めてますし、接点を探しています。
既存顧客や業界の専門家、買い手企業のパートナーとなる企業に対して、買い手企業が情報を得るうえで活用する情報源であるため積極的な情報発信することやパートナープログラムを展開して理解と認知を図ることが有効です。
既存顧客も買い手企業のビジネスパートナーもターゲットとして、リファラルを促進するコミュニケーションを実施することが買い手企業へのアプローチにつながることでしょう。
・既存顧客(購入企業の担当者)と営業担当は個人的なつながりがあるとMTGアポを取得する可能性が4.2倍高くなる。
・リファラルプログラムを通じてブランドを誰かの知人に紹介した際に関与する可能性が5倍高くなる。
(Revenue:https://www.revenue.io/blog/tweet-worthy-stats-that-reveal-the-power-of-referrals)
B2Bリファラルマーケティングプログラムをマーケティングキャンペーンの一環として実施しよう
B2Bのリファラルプログラムを強化するためには、まずは、正式なリファラルプログラムを立ち上げることです。
そして、 リファラルプログラムを開始したという情報をしっかり顧客に認知を図ることが重要になります。あなたがマーケティング部門なのであれば、今すぐリファラルプログラムを提案して実行しましょう。
いくら立ち上げても顧客が認知していなければ紹介をしてくれる機会は少なくなってしまいます そういったツールを提供する企業では、リファラルマーケティングを実施するためのノウハウを提供してくれます。
独自に実施するよりもそういった企業の知見とノウハウを活用することがおすすめです。 B2Bにおいては、リファラルマーケツールを利用することで、「リファラルによるリード生成と変換を加速する可能性が3倍高くなる」というデータもあるくらいです。
まずは、メールマーケティングのキャンペーンの一環としてリファラルプログラムを構築して、顧客への認知を図ってみましょう。
リファラルマーケティングを施策として回すことは、通常のEメールマーケの約38倍の効果があるというデータもあります。 まずは、顧客満足がより高い顧客に対して積極的な紹介をお願いしてみましょう。
B2Cのサービス企業でも同様の傾向がありますが、顧客の多くは紹介を行うことについて実はそこまで厭いません。 「顧客の91%紹介を行う」と言う一方で、営業担当者の11%しか、紹介依頼ができていないそうです。
(The Marketing Blender:https://www.themarketingblender.com/statistics-boost-sales/)
マーケティングの施策としてリファラルプログラムが用意できている企業は収益目標を達成する確率が高くなります。今後、B2Bにおけるリファラルマーケティングでは、顧客の紹介体験(誰が、いつ、どこで、どのように紹介するか)を踏まえたリファラルプログラムを用意することがポイントです。
B2Bにおけるアンバサダーマーケティング(ファンマーケティング)
アンバサダーマーケティングキャンペーンは、何もB2Cだけのものではありません。 B2Bマーケティングにおいてもアンバサダーとなる既存顧客がB2Bマーケティングに大きな影響をもたらします。 アンバサダーとなる顧客が増えていくことがあなたのビジネスにグッドサイクルをもたらすことは間違いないでしょう。
B2Bマーケティングにおけるアンバサダーに関わるデータは次のとおりです。
・買い手企業の購入決定の91%は、口コミが影響している。
・アンバサダーによって共有・作成されたコンテンツは、ディスプレイ広告よりも11倍高いROIがあった。
・売り手企業のマーケターの92%は、アンバサダーマーケティングが「オーディエンスにリーチするのに効果的」であると信じています。
(Martech:https://martech.org/2018-the-year-of-influencer-marketing-for-b2b-brands/)
アンバサダーをどのように選ぶべきか?
B2Bマーケティングにおいてアンバサダーを選ぶポイントは、B2Cのインフルエンサーマーケとは重要な違いがあります。
アンバサダーとなる人というのは、その人から情報を買い手企業やパートナーたちが聞く価値がある方=信頼できる人物であることとです。そして、自らの口であなたの製品やサービスを支持し、応援してくれる人々です。それは言い換えると、とても熱量が高い既存顧客の担当者やパートナー企業であり、なおかつ自社プロダクトのファンであることを評価する必要があります。
そのためには、カスタマーサクセスやパートナープログラム、コミュニティマーケティングを通じてコアとなる人材の行動を常にウォッチする必要があり、その人たちとの関係づくりを怠らないことがとても重要です。
最高のアンバサダーは、ソーシャルメディアのご意見番であるとは限らない。
もちろん、「書籍やセミナー登壇するような専門家や研究者」のようなご意見番は、とても効果的ですが彼らの哲学や思考と自社プロダクトがもつ特徴がマッチする必要があります。専門家や研究者の多くは、自身の社会に対する貢献をアピールすることをモチベーションとしている方は少なくありません。そのため、アンバサダープログラムに参加いただくためには、それなりの対話やコラボレーションを図る必要があります。
こういった活動はブランディングと同じで簡単には成り立たないため、コラボレーションやディスカッションする機会を重ね、関係構築を図ることで、成果を上げることが可能となってきます。
少なくとも1か月や半年といった短い時間でのアンバサダープログラムの成果を期待してはいけません。
「ローマは一日にして成らず」です。
最後に
今回は、B2Bにおけるリファラルマーケティングは効果があるのか?という観点から様々な調査結果をご紹介してきました。調査データからわかる通りリファラルマーケティングは、B2Bにおいてもとても強力な施策の一つです。
売り手企業も買い手企業もリファラルプログラムの重要性や成果に気づきつつありますが、意外にもちゃんとしたリファラルマーケティングを実施できている企業は多くはありません。
日本では、マーケティングオートメーションやセールスオートメーションいったツール先行でようやくリードジェネレーションやセールスマネジメントの領域に注目が行くようになりました。私たちは、これからの時代はB2B領域においてもリファラルマーケティングが重要になると考えています。
すでにそれに気づいているB2B企業はお問い合わせをいただいて、パートナープログラムの強化をご相談にいただく機会も徐々に増えつつあります。
上記の調査データがリファラルプログラムの検討に役立つことを願っております。
もし、B2Bでのリファラルプログラムの立ち上げ支援をご希望される方はお気兼ねなくご相談ください。
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