2021.09.06 マーケティングノウハウ
NPSの計測は「この商品やサービスを知人や同僚に薦める可能性は、どのくらいありますか?」という質問を顧客に実施し、0~10点の点数をつけてもらうことで行われます。質問への回答は一律10点満点で、9~10点は「推奨者」、7~8点は「中立者」、0~6点は「批判者」と分類します。この0~10点までの11段階の評価を集計し、「推奨者の割合-批判者の割合」を算出した結果がNPSです。
NPSと顧客満足度の違い
NPSの質問項目は「万国共通」なので、他社比較が容易
NPSの質問項目は一択のみ。この質問の元に、全ての企業のロイヤルティが一律に算出されます。
一方の顧客満足度調査では、企業によって満足の定義も質問項目も異なるため、顧客満足度を通した企業間の一律比較はできません。
NPSと長期的収益とには相関関係が認められている
NPSは様々な満足度調査の中でも、サービス継続購入率や事業成長率との相関関係が認められている調査指標です。
このため「満足度調査の結果がいいのにリピート率が上がらない」という事態に陥りにくいとされており、日本企業にも導入が続々進められてきた背景があります。
画像引用元:beBit社の記事 https://www.bebit.co.jp/column/article/01-what-is-customer-loyalty/
中級編:日本でのNPS傾向と注意点を理解しよう
日本ではNPSの値が低くなりやすい
一方でNPSは、日本では特例的に値が低くなりやすいことでも知られています。
下記グラフは、NTTコムオンラインによるNPS調査の点数分布を示したものです。
どの業界でも日本では「5」または5〜8をつける人が圧倒的に多くなっていますが、NPS調査の場合、5〜6は「批判者」としてマイナス要因になりますし、7〜8は「中立者」として加点要因にはなりません。
結果として多くの企業で、NPSの結果はマイナス数値を出すことになります。このような傾向は世界的にみても特殊と言われています(NTTコムオンラインが発表している「業界別ランキング&アワード」https://www.nttcoms.com/service/nps/report/でも、1位企業にもかかわらずマイナス数値のオンパレード。少し違和感を覚えますね...)。
引用元:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/00661/
NTTコム オンライン「NPS業界ベンチマーク」(2014年12月実施)の推奨度分布をもとに作成したグラフ
自社商材の特性によっては、NPS計測だけでは不十分な場合も
一方で商材やサービスの特性によっては、ロイヤルティとNPSとが相関関係にない企業もあります。
例えばある調査によれば、大手スーパー「オーケーストア」は、スーパーマーケットの中でも顧客満足度・ロイヤルティともに1位にもかかわらず、NPSで計測できる推奨度は5位という結果に(参照:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00493/00001/)。
つまりサービスには満足しており継続可能性も高いにもかかわらず、「お勧めしたいか?」と言われると・・・という反応。
このような場合、NPSだけを追っていては自社の満足度を正しく評価することができません。
まずは複数の指標を計測し、自社にとってどの指標を追うべきなのかを検討しましょう。
NPSと併用したい顧客満足度の計測方法
NPSは有用な指標である一方、上記のような注意点も考慮する必要があります。
NPS以外の有用な顧客満足度測定方法は複数あります。下記表の上4つは実際に顧客に質問することで測定されますが、下2つは実際の顧客行動に基づいて測定されます。
顧客の声と実際の行動とが相関関係にあるか、という点にも着目しながら、両方の尺度で成果測定することが望ましいでしょう。
顧客満足度 | 満足度はどのくらいですか?と質問 |
リピート意向 | また利用したいですか?と質問 |
NPS | 知人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?と質問 |
愛着度 | サービスがなくなったらどれくらい悲しいですか?などと質問 |
継続率 | 実際に継続が起こる率を計測 |
リファラル発生率 | 実際に周囲へのオススメが起こる率を計測 |
上級編:NPSの内実を理解して施策に生かそう
内訳や総合数値にとらわれすぎず、まず「推奨者」の存在に注目しよう
NPSでは「2」をとろうが「6」をとろうが、スコア数値には影響はありません。つまりNPSでは「推奨者」に最大限の比重を置いており、「不満足ではないが普通に満足している顧客」の存在をプラス要因に含めていないのです。
いくら日本でNPSの値が低く出ると言っても、NPSの根底にあるこの「推奨者に注目する」という哲学をないがしろにする手はありません。
NPSの値が低く出やすい日本だからこそ、回答分布にばかり着目するのではなく、9〜10の回答を出している顧客が誰なのかを把握し、その顧客の満足度の要因を知ることが重要です。
「購入前の体験」がNPSに影響している可能性も?
例えば下の図はファッションビル業界のNPS向上において、各顧客体験がどの程度影響しているかを比較したグラフです(調査:株式会社Emotion Tech)。縦軸は各体験のNPS向上における影響力の強さを、横軸は時系列での顧客体験を並べています。
図を見ると、少なくともファッションビル業界においては、「口コミ・評判」という「購入前の体験」がNPS向上に非常に大きな影響力を持っていることがうかがえます。
画像引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000021205.html
また「口コミ・評判」の内訳としては圧倒的に「知人からの口コミ」が多く、SNSや有名人の発信などを大きく押さえています。
画像引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000035.000021205.html
このように、NPSの結果は実際の店頭体験のみによって決まるわけではありません。
サービスを知る際の「入口」や「第一印象」がサービスの推奨度に大きく関わっており、場合によっては店頭体験よりも強い影響力を持つケースがあるのです。
以上のようなケースが全ての業界に起こるわけではありませんが、顧客がサービスを体験する中でどのようなタイミングで推奨度が高まるのかを知っておくことは、顧客体験改善の上でも非常に重要なポイントでしょう。
実際に推奨行動を起こすための仕掛けを用意しよう
NPSの結果までもが口コミに影響される可能性があるとすれば、NPSの計測と同時に実際の推奨行動を促進するための施策を打つことも必要でしょう。顧客にインセンティブを用意して推奨行動を促進するリファラルキャンペーンを実施し、推奨意向と実際の推奨行動とが相関関係にあるかを把握することで、顧客が実際に商品をおすすめしてくれるかどうかを把握し、どのようなキャンペーンだと推奨行動を起こしやすいか検証することができます。
またリファラル施策の魅力は、インセンティブの付与を通してさらなる顧客満足度向上をはかり、サービスへのエンゲージメントを高められることです。熱量の高い顧客に適切なアプローチを実施し行動を促進するために、NPSとリファラル施策とはそれぞれ両軸で実施することをお勧めします。
まとめ:NPSを最大限活用するために
NPSは顧客の満足度評価における代表的な指標として、日本企業にも広く取り入れられています。
NPSの良さを最大限に理解し、施策に活用するために、自社での活用ケースを今一度検討されてはいかがでしょうか。
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「そもそも、リファラルって何?」という方がいらっしゃる場合、こちらの記事も併せてご覧ください。