2022.09.13 紹介ノウハウ
魅力的なプログラムを演出しよう~リファラルマーケティングのポイント③~
「紹介しやすさ」は行動面と心理面の両方で考える
紹介プログラムの設計=特典選び、だけではありません。
前回の記事で、紹介プログラムの成功には商材への愛着度が重要だとお伝えしました。
しかしいくら紹介したい気持ちがあっても、特典のためにお友達を「売る」ような見せ方の紹介プログラムでは、かえって紹介意欲をそいでしまいます。
紹介プログラムでは特典の魅力に留まらず、「紹介しやすさ」を設計する必要があります。
ここで言う「紹介しやすさ」は大きく2つの要素に分解されます。
1)アクションしやすい仕組み=行動の負担が小さい
2)紹介したくなる仕掛け=心理的負担が小さい
上記2つを兼ね合わせたプログラムが魅力的なプログラムとなります。
※このブログ記事の内容についてより詳しく知りたい方は、『リファラルマーケティング大全』(フォレスト出版、2022年9月17日発売)をご覧ください。
1. 行動面の「紹介しやすさ」
まずは、行動の負担を減らすための「紹介しやすい仕組み」について確認してみましょう。行動の負担を減らすキーとなるのは「デジタルの活用」です。
以下のチェックポイントのうち、自社ではいくつクリアできていますか?
✓ 紙だけでなくスマートフォンひとつで紹介できる
✓ 情報の入力は最低限で済むようにしている
✓ 様々なタッチポイントで、複数回にわたって告知している
ポイント①:紙だけでなくスマートフォンひとつで紹介できる
紙のカードは企業側には大変手軽です。印刷すれば完成で、スマホのようにアプリやウェブ上の仕組みをつくる必要もありません。
しかし顧客目線に立った場合、紙のカードはデメリットが大きいです。折角紙でカードをもらっても、実際には家のどこかに放置してしまい、いざ紹介したいときに手元にない...。あなたにもそんな経験があるのではないでしょうか。
そこで最近一般化しているのが、LINEなどのメッセージアプリでデジタルの紹介カードを送る手法です。
LINEの利用人口は約1億人。友達のメールアドレスや電話番号は知らなくてもLINE上ではつながっている、というケースはどの年代でも珍しくありません。このLINEというインフラを活用して、友達に紹介カードをデジタルで送ってもらうのです。
LINEなどのデジタル活用はコロナ禍によってさらに普及し、定着しました。友人と対面で会う機会が減り、カードを手渡しする機会も当然ながら減少したためです。
紙だけの紹介プログラムを行っている企業と、デジタル紹介を併用している企業とで、コロナ以降の紹介件数の減り方に大きな差分が出た、というデータもあります。
ポイント②:最低限の情報入力だけで済む
さらに顧客がアクションしやすくするためには、紹介者が入力する手間を極力減らすことを考えましょう。
せっかくデジタル化しても、下記のようなフォームでは情報確認・入力の手間が多く、離脱に繋がります。
× フォーム項目が10項目以上ある
× 自分で調べなければならない情報がある(例:どこに書いてあるか分からない会員番号)
× 自分だけでなく、お友達の情報まで入力しなくてはならない
とはいえ顧客特定のために必要な情報が取れていなければ、今度は企業側の手間が増えてしまいます。
自動入力を用いる、データの突合に必要となる必要最低限の情報入力だけで済ませるなど、ユーザファーストに立った最適なフォーム項目を検討しましょう。
ポイント③:1回きりの告知で済ませない
紹介プログラムを一度告知しただけで終わってしまっている...というパターンは、失敗する紹介プログラムにありがちです。
人間の記憶力はそれほど優秀ではありません。1回紙のカードを配っただけでは、紹介プログラムの存在は忘れられてしまいます。
とはいえ紙のカードだけで何度も告知をしようとすると、郵送コスト、印刷コスト、管理コストがかかってしまいますし、また「告知がしつこい」という印象を与える可能性もあります。
ここでも、低コストで、かつ様々なタッチポイントで告知できるデジタルの導線が重要となります。
デジタルであれば、LINEやメール、WEBサイトなど様々なタッチポイントを駆使し、顧客の目につく箇所でさりげなく告知することができます。
店頭でもQRコードなどを活用し、店頭のポスターから紹介プログラムのページを読み込んでもらうなど、オフラインからの誘導も行いやすいです。
デジタルをあらゆる機会を通じて、プログラムの存在を思い出してもらえるようになります。
2. 心理面の「紹介しやすさ」
続いて、心理面のハードルを下げるための「仕掛け」つまりキャンペーン設計のポイントについて確認してみましょう。
(キャンペーン設計については書籍で、より詳しく要素分解して解説しています。)
以下のチェックポイントのうち、自社ではいくつクリアできていますか?
✓ 顧客が紹介したくなる特典を選んでいる
✓ 紹介の対象とシーンが思い浮かぶ訴求ができている
✓ 自社のターゲットに合わせたコミュニケーションができている
ポイント④:特典はサービスの演出でありコミュニケーション手段
特典はインセンティブではなく、顧客へのメッセージです。
例えばAmazonギフト券は使い勝手が良く汎用的なので、非常に人気な特典です。しかし、「誰にでも喜ばれる」Amazonギフト券を選ぶことで、「金券」「オトク」のイメージが前面に出てしまってはいないでしょうか。
顧客体験を充実させるという観点で、自社のターゲットからもっと喜ばれる特典、印象に残る特典はないか、一度よく考えてみましょう。
例えばオンラインストレージのDropboxは、サービスと連動した特典を用意して、紹介キャンペーンを成功させました。1人紹介するごとに500MB、最大16GBまでの無料ストレージを特典としたのです。このように自社サービスのメリットに直結する特典を採用することで、既存顧客の継続を促すことが出来ます。また、そもそも自社サービスにメリットを感じている満足度の高い顧客が紹介してくれるので、紹介の質向上も見込めます。
また、ある呉服販売会社には、特典として新規契約者にお花のプレゼントを提案したことがあります。
この特典には2つの狙いがあります。1つは、着物を着るという少し特別なイベントに花を添えることで、より充実した顧客体験を提供するというものです。このユニークな施策によって顧客満足度が高まり、継続顧客・推奨顧客になってくれる可能性が高まります。 もう1つは、SNSで紹介体験をアピールしてもらうことです。「着物+花」という最高に「映える」組み合わせ。SNSに投稿する際に、呉服店の名前や店舗に対する感謝のメッセージがシェアされれば、大きな宣伝効果を発揮するでしょう。
ポイント⑤:紹介の対象とシーンを明確にする
誰にでも紹介できそうだけれど、かえって誰にも響かない紹介プログラム。そんな企画を私たちは「砂に水を撒まくようなものだ」と表現します。あまりにも対象が広すぎて、いくら告知しても顧客の行動を促せないからです。
例えばこんな紹介キャンペーンがあったらどうでしょう。あるサービスがアプリをリリースしたとします。まずはアプリをダウンロードしてもらうために「対象は誰でもOK。特典を差し上げますので、1人でも多くの方に紹介してください」という内容です。 あなたが紹介依頼されたら、困ってしまうのではないでしょうか。
「誰がこのサービスを使っているんだろう?」「このサービスを使っている友人がいるが、彼がアプリを入れてどんな得があるというのだろう?」 このように対象やシーンが不明確な状態では紹介は発生しません。
もしこれが「仕事と育児を両立するために頑張っているママさんにおすすめ」とあれば、ターゲットがはっきりしますし、そのターゲットがアプリを使うシーンもイメージできます。すると「誰々さんにピッタリかも」と紹介が発生するのです。
ポイント⑥:ターゲットの特性に応じてメッセージを決める
自社のターゲットの特性をよく考えて、メッセージを考えることも重要です。
書籍では、ターゲットの特性として下記の2パターンを紹介しています。
A:世話好き型(共感など気持ちを重視。女性に多くみられる)
B:マッチョ型(上下関係または漢気を重視。男性に多くみられる)
世話好き型のターゲットには、サービスの世界観や安心感・信頼感といった訴求が向いています。
例えば下記のようなイメージです。
《世話好き型におすすめの訴求例》
・あなたの『幸せ体験』をおすそわけしませんか?
・お友達と一緒に○○○の輪を広げましょう!
上記のように「世話好き型」では特典のメリットというより、相手を思っての紹介であること、相手と世界観を共有したいことなどをフックに起こることが多いです。このようなターゲットには、あまり金銭を意識させすぎる特典は逆効果となるでしょう。
一方でマッチョ型のターゲットには、特別感、ブランドの権威性、本格派であること、新しいこと、実利的なメリットなどが訴求ポイントになります。
《マッチョ型におすすめの訴求例》
・知る人ぞ知る○○○を友人とシェアしよう!
・一流コミュニティへのご招待
・紹介すればするほど○○○もらえる!
ポイントとなるのは、そのサービスを先行して利用している「先輩」である紹介者が「後輩」にサービスメリットを語る機会をつくることです。その際、「特典もらえるんだって」のように自分のおかげで相手にメリットを与えられる強力なインセンティブは、紹介の有効なフックになるのです。
もちろん、女性だから「世話好き型」、男性だから「マッチョ型」と、明確な二分法でコミュニケーションを決められるわけではありません。あくまで自社の顧客や、紹介を促したい優良顧客にどのようなメッセージが響くか...という視点が大事です。
まとめ:「紹介しやすさ」の設計には、顧客視点が何より大事。
「紹介しやすさ」と一口に言っても、仕組みの整備から心理面のケアまで、様々な側面があります。
しかしいずれにせよ重要なのは、顧客の視点に立ち、顧客が紹介するための障壁を可能な限り除去することです。
とはいえ、実際に施策を運用してみなければ気づけないポイントも多いはず。
紹介プログラムを改良し、しばらく運用してみたら、実際の既存顧客の反応を数値やアンケート、聞き取り調査などで分析してみましょう。少しずつ改良を加えることで、紹介プログラムはより有効なものに成長していくはずです。
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トピック: 紹介ノウハウ
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