2024.12.04
サービスプロフィットチェーン(SPC)とは?具体を的な事例を交えてわかりやすく解説
各業界において、【顧客満足度の向上×売上増加】は常に大きな課題となっています。この課題に対する効果的なアプローチとして注目を集めているのが、サービスプロフィットチェーンです。
サービスプロフィットチェーンは、従業員満足度から企業の収益性まで、一連の価値連鎖として捉える画期的なフレームワークです。多くの企業がサービス品質の向上に苦心する中、その解決の糸口は意外にも社内にあります。
本記事では、サービスプロフィットチェーンの基本概念から実践方法まで、具体的な事例を交えながら解説していきます。
これらの知見は、あらゆるサービス業の企業にとって、持続可能な成長への重要なヒントとなるでしょう。
1.サービスプロフィットチェーンとは?
サービスプロフィットチェーンは、「企業の収益性と成長が、従業員満足度から始まる価値連鎖によって生み出される」ことを示した経営モデルです。1994年にハーバード・ビジネス・スクールの研究者たちによって提唱されました。
このモデルでは、「従業員満足度」が向上することで従業員のロイヤルティが高まり、質の高いサービス提供が実現する。その結果、「顧客満足度」と顧客ロイヤルティが向上し、最終的「企業の成長」につながるという好循環が生まれるとされています。
このアプローチの最大の特徴は、従来の顧客中心主義をさらに発展させ、従業員満足度に重点を置いている点です。特に、店舗型のビジネスモデルにおいては、非常に重要な考え方となるでしょう。
サービスプロフィットチェーンは、従業員と顧客の両者を重視することで、長期的な経営成長を実現するための実践的なフレームワークです。
2.サービスプロフィットチェーンの実現に向けた7つの段階
サービスプロフィットチェーンでは、企業が持続的な収益向上を実現するための「7つの段階」があります。これらの段階が連携し、企業の取り組みがプロセス全体でスムーズに循環することで、安定した成長が期待できます。
ここでは、以下の7つの段階を詳しく解説していきます。
1.従業員へのサービス提供で従業員満足度を高める
2.従業員ロイヤルティを高める
3.従業員ロイヤルティの高まりによる生産性向上
4.サービスの品質向上
5.高いサービス品質の提供による顧客満足度の向上
6.顧客ロイヤルティの向上
7.企業の成長サイクルを実現
2.1 従業員へのサービス提供で従業員満足度を高める
従業員満足度の向上は、サービスプロフィットチェーンを成功に導く基盤となります。この段階では、従業員にとって働きやすい環境を整備することが重要です。
具体的には、以下のような制度を検討、充実させましょう。
・適切な労働環境の整備
・公平な評価・報酬制度の確立
・充実した教育研修制度の提供
もちろん制度の整備だけではなく、従業員との双方向のコミュニケーションも不可欠です。定期的な1on1ミーティングの実施や、従業員の声を経営に反映させる仕組みづくりによって、従業員は自身の価値が認められていると実感することができます。
従業員を「顧客」として捉えて、従業員満足度が上がるような取り組みを行うことを意識しましょう。
2.2 従業員ロイヤルティを高める
第2段階は、従業員満足度の高い従業員のロイヤルティを高めるフェーズです。
従業員ロイヤルティは、勤続年数の長さで判断するのは禁物です。重要なのは、従業員が組織の理念や目標に共感し、自発的に貢献したいと感じる状態を作り出すことです。そのため、従業員が自律的に意思決定できる環境があることで、仕事への当事者意識が高まり、より強い責任感とモチベーションが生まれます。
ここでは、従業員の組織への帰属意識を高めることを意識しましょう。
2.3 従業員ロイヤルティの高まりによる生産性向上
第3段階目に入ると、従業員の業務への取り組み方に質的な変化が生まれます。
高いロイヤルティを持つ従業員は、単に与えられた業務をこなすだけでなく、より効率的な方法を自ら考え、提案するようになります。さらに、チーム内でのナレッジシェアリングも活発になり、組織全体の生産性向上につながります。
結果的に、業務に対する深い理解と経験の蓄積により、問題解決のスピードが向上し、より質の高いサービス提供が可能になります
このような生産性の向上は、従業員一人一人の成長実感にもつながり、さらなるモチベーション向上という好循環を生み出します。
2.4 サービスの品質向上
高い生産性は、必然的にサービス品質の向上をもたらします。この段階では、標準化された高品質なサービスを維持しつつ、顧客個々のニーズに応える柔軟性を持つことも求められます。
このバランスを実現するために、継続的な改善プロセスを確立しましょう。顧客からのフィードバックを積極的に収集・分析し、サービス提供プロセスに反映させていくことで、より洗練されたサービスが実現できます。また、従業員からの改善提案を積極的に採用することで、現場の知見を活かしたサービス品質の向上が可能になります。
2.5 高いサービス品質の提供による顧客満足度の向上
第5段階では、質の高いサービス提供を通じて顧客満足度の向上が実現します。これは、顧客がサービス品質の向上を実感することで、心理的な変化が生まるためです。
ここでの重要なポイントは、顧客の期待値を正確に理解し、それを上回る価値を提供することです。そのためには、定期的に顧客調査を実施し、市場動向を分析することで、変化する顧客ニーズを把握する必要があります。また、サービス品質の一貫性を確保することも欠かせません。これには、標準化されたサービス提供プロセスの整備や、従業員教育の充実が不可欠です。
2.6 顧客ロイヤルティの向上
顧客満足度の向上は、継続的な利用を促進し、顧客ロイヤルティの醸成につながります。
ロイヤルティの高い顧客は、単なるリピート客に留まらず、企業やブランドの理解者となり、「周囲に推奨する存在」へと発展します。ここでは、顧客との継続的なコミュニケーションが重要です。顧客の声に真摯に耳を傾け、それをサービスや製品の改善に活かすことで、信頼感をさらに高めていきましょう。これは、ブランドへの愛着を深めることにもつながります。
また、ロイヤルティの高い顧客による「紹介」を自然に促進する手法として、リファラルマーケティングを導入することが効果的です。紹介を後押しする仕組みを整えることで、新規顧客の獲得と既存顧客との関係強化の両方を実現することができます。
2.7 企業の成長サイクルを実現
サービスプロフィットチェーンの最終段階は、持続可能な企業成長の実現です。
ロイヤルティの高い顧客基盤は、安定した収益をもたらすだけでなく、「口コミ」や「リファラルマーケティング」を通じて新規顧客の獲得にも大きく貢献します。特に、リファラルによって獲得した顧客は、既存顧客からの推奨を受けた信頼度の高い状態で企業と接触するため、継続的な利用に発展しやすいという特徴があります。
ここで実現した既存顧客との深い関係性は、新サービスの開発やマーケティング活動においても大きな強みとなります。
このように、サービスプロフィットチェーンの本質は、従業員満足度、顧客満足度、収益といった各指標を独立して捉えるのではなく、それらを連動させて全体的な価値連鎖を最適化することにあります。このアプローチによって、企業は長期的な成長と持続可能な競争優位を確立することができます。
3.サービスプロフィットチェーンの実現に取り組んだ事例
ここからは、サービスプロフィットチェーンを実現している3社の成功事例をご紹介します。これらの事例を参考にして、具体的な施策のイメージを深めていきましょう。
3.1 星野リゾート
長野県軽井沢で創業し、現在では全国約40施設を展開する星野リゾートは、サービスプロフィットチェーンの理念を体現する代表的な企業です。
同社では、顧客満足度調査で得た顧客からの声を活用し、顧客からのポジティブな評価をスタッフに共有することで、従業員が自信を持って業務に取り組める環境を整えています。これによって、サービス品質の改善と従業員のやる気向上の双方を実現しています。
さらに、従業員が安心して働ける職場環境の構築にも力を入れています。定期的に実施する従業員満足度調査をもとに、給与や福利厚生、休暇制度の改善を行うなど、働きやすい環境づくりを推進。これにより、従業員の満足度を高めるだけでなく、サービスの質をさらに向上させる好循環を生み出している点が特徴です。
3.2 スターバックス・コーヒー
出典:スターバックス公式サイト
世界最大のコーヒーチェーン店として知られるスターバックスは、高品質なコーヒーとくつろぎの空間を提供することで、コーヒーショップの在り方を変革した企業です。
同社の特徴は、従業員を「パートナー」と呼び、真のビジネスパートナーとして扱う文化にあります。パートタイマーでも利用できる充実した福利厚生制度や、合格することでブラックエプロンがもらえる「コーヒーマスター制度」などが特徴的です。
また、お客様とのつながりを重視した接客では、お客様と真摯な対話を通じた関係構築を推奨。各店舗による地域密着型のコミュニティ活動も展開し、顧客との強い絆づくりに成功しています。従業員満足度の向上が、質の高いサービス提供と顧客ロイヤルティの構築につながっている好例といえます。
4.サービスプロフィットチェーンを実現させる方法
4.1 サービスプロフィットチェーンの可視化
サービスプロフィットチェーンを実現するためには、まずは7つの段階を明確に把握し、各段階での状況を可視化することが重要です。従業員満足度、サービス品質、顧客満足度、顧客ロイヤルティ、収益といった要素がどのように連動しているかを見える化することで、現状の課題や改善すべきポイントが浮き彫りになります。
例えば、従業員のエンゲージメントや業務満足度を定期的に測定することで、内部サービスの質や職場環境の改善余地を特定できます。一方で、顧客満足度やロイヤルティの調査結果を分析することで、顧客体験やサービス品質の向上に向けた具体的なアクションを導き出すことが可能です。
また、各店舗やチームの成果を定量的に把握するためのツールを活用すれば、サービスプロフィットチェーン全体のパフォーマンスを俯瞰して確認できます。
これにより、具体的な改善策をスムーズに実行できる基盤が整い、全体の価値連鎖が効果的に機能するようになります。
4.2 従業員満足度と顧客満足度を把握する
サービスプロフィットチェーンの成功には、従業員満足度と顧客満足度の正確な把握が欠かせません。
満足度の測定のため、まずは下記2つの調査方法を取り入れてみましょう。
従業員満足度調査(eNPS)
従業員の率直な意見を把握するため、匿名性を確保した定期的な調査を実施します。調査結果を分析し、フィードバックをもとに改善策を講じることで、従業員のエンゲージメント向上につなげます。
顧客満足度調査
顧客体験を総合的に理解するため、定量的なデータ(スコアなど)と定性的なデータ(自由回答)を組み合わせた調査を実施します。これにより、具体的な顧客ニーズや課題を把握し、改善施策に反映させることができます。
4.3ツールの活用
ツールの活用は、サービスプロフィットチェーンの実現を効率化する鍵となります。施策の実行とデータ管理を連動させることで、より正確で迅速な意思決定を可能にします。
例えば、紹介営業専門ツール「紹介営業クラウド」では、カスタマイズ可能な紹介コミュニケーションを活用して顧客との関係を強化する一方、成果計測やレポート機能によってスタッフのモチベーション向上を同時に実現します。
紹介営業は、営業スタッフが顧客との関係構築のサイクルを作り出すことで、顧客の自発的な紹介行動の促進を目指す手法です。この手法をツール上で管理を行うことによって、営業スタッフの成果に限らず、顧客満足度や顧客行動に関するデータを収集・分析することが可能になるため、データに基づいた営業活動の改善や効果的な戦略の立案が実現します。
そうすることで、営業スタッフの負担軽減や活動の効率化を実現し、さらには紹介営業をスムーズに進めるサポートとなり、結果として営業全体のパフォーマンス向上にもつながります。
以上のように、サービスプロフィットチェーンを効果的に向上させるためには、適切なツールの導入を検討することも重要です。ぜひ、自社の課題に合ったツールの活用を視野に入れてみてください。
5.まとめ
ここまでサービスプロフィットチェーンについて解説してきました。
サービスプロフィットチェーンは、従業員満足度から企業の成長までを一連の価値連鎖として捉える革新的な経営フレームワークです。その実践には、従業員への投資、サービス品質の向上、顧客満足度の向上という段階的なアプローチが必要です。各企業の実情に合わせた取り組みを展開して、持続可能な成長サイクルの確立を目指しましょう。
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