2022.09.13 紹介ノウハウ
自社商材の独自性を見つけよう~リファラルマーケティングのポイント①~
自社商材の「独自性」はリファラル成功の基礎中の基礎!
既存顧客からの「紹介」で自社商材を広げるリファラルマーケティング。
リファラルマーケティングが上手くいくための3つのポイントのうち、最も基礎となるのは「自社商材の独自性」です。
弊社独自調査によると、商品を紹介された側がその商材に対して求めるものは「商品の特色やメリット、良い点などがわかりやすいこと」が最も多く、34.4%でした。
※このブログ記事の内容についてより詳しく知りたい方は、『リファラルマーケティング大全』(フォレスト出版、2022年9月17日発売)をご覧ください。
顧客の感動ポイントは時代とともに変化している
では、顧客の印象に残る「独自性」にはどのような特徴があるのでしょうか。
実は顧客が感動するポイントは、時代とともに変わっています。具体的には①手頃な価格、②充実した機能、③利便性・サービス面、④体験価値、⑤成功体験(カスタマーサクセス)です(数字が下るほど高次の感動となっています)。
商品・サービスが溢れる現代では、①~③のポイントではよほどのことでないと感動が得られません。これからの企業は④体験価値、⑤成功体験(カスタマーサクセス)で勝負するべきでしょう。具体的には「この商品を使って生活が変わった」「このサービスを利用して人生観が変わった」など顧客視点での感動ポイントをストーリーの形で伝えるのが有効です。 そうすることで顧客は実感として商品価値を理解し、友人や家族に伝えたいという気持ちになるのです。
顧客体験や顧客の成功体験(カスタマーサクセス)は簡単に再現できない
いくら商材に独自性があっても「せっかくの取り組みが他社に真似されてしまうのではないか」と危惧する人がいます。確かに同じようなサービスを始めることは誰にでもできそうな気がします。しかし実際には簡単に真似できるものではありません。
アメリカの著名なUX(ユーザー体験)デザイナーであるジェシー・ジェームズ・ギャレット氏は、UXデザインの5段階モデルを提唱しています。それによれば、ユーザーから見えているデザインやおもてなしといった表層(具象)の下には、骨格・構造・要件・戦略といった目に見えない階層(抽象)が4つ存在しています。要するに、目に見えるところだけを真似をしようとしても真似られない、ということです。
さらにユーザーから見えている表層(デザイン)も、簡単には真似できません。独自性のあるサービスは、経験によるデータの積み重ねを基に継続的な改善・改良を行います。ある時点での表層部分を真似できたとしても、本家本元はすぐに先に行ってしまうわけです。
企業には他社が簡単に模倣できない3つの資産があるといわれています。それは①顧客データ、②ブランド価値、③ネットワーク効果※です。
機能の先行者利益は乏しく、すぐに真似られて陳腐化してしまいますが、顧客体験やカスタマーサクセスといったより高次な分野の先行者利益はそう簡単に追随できません。安易に追随するより、自らも開拓し先行者利益を得るほうが得策といえるでしょう。
ただし先行者利益に安住していると、まったく違う業界から来た業者や、破壊的といわれる新しいサービスを提唱する新興企業に市場を根こそぎ奪われる恐れがあります。先行者利益に安住せず、継続的な改善・改良・変革を続けることが大切です。
※ネットワーク効果:ユーザーが増えれば増えるほど、その商品、サービス、プラットフォームなどの価値が高まること。
顧客体験やカスタマーサクセスを重視するサービス事例
事例1:Oisix
宅食サービスOisix(オイシックス・ラ・大地(株))は徹底した顧客インタビューから課題を抽出し、顧客視点で問題解決を図ることで成功している例です。
Oisixの顧客である主夫・主婦は、スーパーに行くと、冷蔵庫の中身や家族のリクエスト、子どもの給食などを考慮した上で献立を考えます。そこには「冷蔵庫の食材を使わないといけない」「手をかけて作らないといけない」という、”考える”ストレスが発生します。さらに小さな子どもは、保育園から帰宅する頃には「お腹が減った」とぐずり始める......。とはいえ、お菓子はなるべく与えたくありません。
Oisixでは、こうした顧客が抱える悩みを徹底した顧客インタビューや社員自身の体験から課題として把握。その課題を解決する商品(サービス)としてKit Oisixを開発しました。Kit Oisixを利用すれば献立を考える手間が省け、食材を余らせることもありません。また小さな子どものいる家庭向けに、調理手順の前半で子どもに「おやつチーズ」をあげることで、おやつをあげずに子どもの空腹をコントロールする商品も提供しています。
※出典:NewsPicks https://newspicks.com/news/3558729/body/
事例2:ラクサス
継続率95%を誇るブランドバッグのレンタルサービス、ラクサスは、サービス開始当初、ブランドバッグの実売価格をサイトに載せていました。そのことで高価なバッグから順番に借りられる傾向ができてしまい、その結果、高い割にはデザインが気に入らない、コーディネートしづらいなど、体験価値を大いに損なうミスマッチが生まれていました。
ラクサスは上記のような顧客目線に立ち、価格の掲載をやめることにしました。 その代わりに、すべてのバッグに5種類前後のコーディネート例を載せることにしました。自分の好みと似たコーディネートを参考にバッグを選ぶことで、イメージと実物のギャップが小さくなり、体験価値が損なわれるリスクが大いに低減します。
ラクサスには、知人の紹介制度があり、紹介した知人が1カ月以上バッグをレンタルすると、紹介者に2,000ポイントが付与されます。この制度を通じて、100人以上の新規顧客を紹介したという優良顧客が30人以上います。中には500人以上も紹介した顧客もいるそうです。 ラクサスでは、顧客の成功(カスタマーサクセス)に特化したサービス設計を行ったことで広告費が大幅に削減されました。削減された広告費はサービス開発に当てられ、さらなるカスタマーサクセスにつながり、継続率がさらに高まり、広告費がまた削減され......という好循環を生んでいます。
出典:日経クロストレンド https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00356/00002/
事例3:トイサブ!
知育玩具をサブスクリプションで提供しているトイサブ!(株式会社トラーナ提供、日本サブスクリプションビジネス大賞2019グランプリ受賞企業)も顧客データとカスタマーサクセスを通し、顧客1人1人の声をサービス改善に生かしています。
知育おもちゃは高価な上、子どもの成長が早いため、すぐに飽きられてしまうという欠点を持つ商品です。そのため買い続けるのは難しいと考える親が多く、定額制で次々と新しいおもちゃを配布してくれるサービスがあるだけでも貴重です。
トイサブ!では、既存顧客の膨大なデータを生かした玩具のオーダーメイド提案を行っています。さらに、データだけではありません。玩具には顧客の要望や意見を取り入れ、遊んだ後の感想も考慮して次回の配布に反映するなど、1対1のカスタマーサクセスも充実させています。
トイサブ!利用顧客の実際の声が非常に印象的です。
「トイサブ!を始めたおかげで、おもちゃとはただ与えておくものではなく、子どもとの大切な時間を共有するためのツールなのだということを知ることができ、オススメします。」
これは顧客による実際のオススメの言葉です。もし自分自身が紹介を依頼されたとしたら使いたくなるフレーズではないでしょうか。
出典:トイサブ!公式ウェブサイト https://toysub.net/
事例4:ベルタ葉酸サプリ
BELTA葉酸サプリは「妊娠初期に摂取することで神経管閉鎖障害という先天性異常の発症リスクを下げることができる」と厚生労働省から認可された葉酸サプリメントです。 ベルタ葉酸サプリでは、ブランド立ち上げ当初からカスタマーサクセスを大切に考え、人とテクノロジーの両面のサポートで、妊娠にかかわる悩みを持つ人たちと本気で向き合い、伴走することを続けてきました。
顧客に必ず担当者が付き、出産成功のためのさまざまな相談に乗っています。時には妊婦の配偶者の愚痴を聞くこともあるそうです。
こうしたカスタマーサクセス第一の姿勢が評価され、株式会社ベルタは2019年「ママが選ぶサポートが充実している会社ランキング」の1位に選ばれました。
出典:BELTA公式ウェブサイト https://belta.co.jp/
自社の強みを見つけるには3C分析が有効
以上、顧客体験・カスタマーサクセスを重視する企業の例を紹介しました。
では、自社商材の強みは実際にはどのように見つければよいのでしょう。
強みを見つけるための考え方としては、3C分析が有効です。3Cとは、自社(Company)、顧客・市場(Customer)、競合(Competitor)の3つを指します。それぞれを同じサイズの円と見て、その重なり方を分析する手法です。
例えば自社と競合が重なっている部分のうち、顧客・市場と重ならない部分があります。これは自社でも競合でもできることだが顧客が望んでいないことであるので、取り組むだけ無駄という領域になります。
このように2つ以上が重なる部分を見ていくと、自社と顧客・市場は重なっているが、競合とは重ならない部分があることに気づきます。この部分こそ「強み」であり、伝えるべき紹介ポイントなのです。
3C分析で紹介ポイントが見つかったとしても、すぐに先に進めるのは危険です。SNSの評価はどうか、顧客レビューはどうか、提供側が楽しみながら取り組めているのかなどを調べて、その評価を真摯に受け止める必要があります。そうしたチェックをくぐり抜けて、最終的に残った顧客視点の強みこそが、追求するべき本当の「強み」です。
独創性で劣る場合の2つのテクニック
とはいえ、本当の意味で唯一無二の独創性のある商品やサービスはなかなかないのも事実です。残念ながら自社の商品が独創性で劣る場合には、嘘にならない範囲で何らかのテクニックで「独自性」を補うことも必要になります。
テクニックとしては大きく2つが知られています。
①選ぶ楽しみをつくる
診断コンテンツなどユーザが選択肢を選んで自分ならではの結果をシェアする、等のコミュニケーションは有効でしょう。例えば化粧品であれば、ファッションタイプ診断やパーソナルカラー診断などが該当します。人材系のサービスであれば、武将性格診断などがあります。汎用的に使えるのが星占いや姓名判断などの占いです。言い換えると「判断プロセスをコンテンツ化すること」であり、そうすることで友達とシェアしたいという動機付けになります。
②強調の仕方を変える
伝え方や表現を変えると相手に与える印象も変わることを「フレーミング効果」といい、それを応用したテクニックです。 例えば、実際には10戦して5勝5引き分けだったとしても、それを10戦無敗といい切るとより強そうに見える、といった例が挙げられます。
フレーミング効果に関連して、ロスフレームとゲインフレームという言葉を覚えておくといいかもしれません。
ロスフレームとは相手が失うもの、すなわちネガティブな部分にフォーカスするメッセージです。「約束を守らないと、人から信じてもらえなくなる」といった表現が該当し、行動の矯正などに効果があります。ゲインフレームとは相手が得るもの、すなわちポジティブな部分にフォーカスするメッセージです。「約束を守ると、人から信じてもらえるようになる」といった表現が該当し、役立つ情報を与えることで相手の満足感が得られます。
多くの場合、良い口コミや紹介はゲインフレームで伝えることが鉄則だといえます。
参考:Mentalist DaiGo Ocial Blog https://daigoblog.jp/loss-gain/
まとめ:サービスの磨き込みが「紹介発生」の最も本質的な近道。
リファラルマーケティングは、小手先のテクニックやCPAのみを重視して挑むべきではありません。
紹介が起きなかった際は、まず根本的な「自社サービスの独自性」について再検討してみましょう。
「こんなサービスだったら、自分では紹介しないな」とマーケティング担当者や現場スタッフ自身が思ってしまうようなサービスでは、本質的に事業基盤となる「紹介」は発生しません。
とはいえ、悲観する必要はありません。
リファラルマーケティングに本質的に取り組むことが、顧客が顧客を呼ぶ盤石な事業基盤を築く第一歩となります。
まずは本記事を元に、自社サービスで磨き込みができそうな「独自性」「差別化ポイント」を検討してみてはいかがでしょうか。
トピック: 紹介ノウハウ
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