2025.06.17 紹介の基本 マーケティングノウハウ
Z世代マーケティングの新常識:広告が刺さらない3つの理由と共感の設計術

「最近の若者、広告を全然見ないよね」——そんな声が企業のマーケティング現場で当たり前のようにささやかれています。
Z世代(1996年〜2012年生まれ)は、生まれたときからスマホとSNSが当たり前のように存在していた“情報リテラシーの高い世代”。彼らは企業からの一方的な広告に対して極めて敏感で、「うさんくさい」「信頼できない」「スキップしたい」と感じているのです。
本記事では、なぜ広告がZ世代に届かないのかを分析し、成功している企業事例から、今後のマーケティングに必要な「共感の設計」について具体的に提案していきます。
広告が届かない3つの背景要因
ここでは、Z世代が広告を信頼しなくなった背景にある「意識の変化」や「メディア環境の違い」を概観します。次章以降では、より具体的な行動傾向や信頼構造の変化について掘り下げていきます。
かつて「テレビCMを流せば商品が売れる」時代がありました。しかし今、同じ広告をZ世代に見せても効果はありません。むしろ「うざい」「スキップする」「信用できない」とネガティブな印象を与えることすらあります。
Z世代の広告離れには、単なる「若者の気まぐれ」ではなく、明確な行動様式の変化があります。
そこには、大きく分けて3つの要因が挙げられます。
日常的に膨大な広告に接することで“広告疲れ”を起こしている
SNSを通じた双方向のやりとりに慣れ、一方通行の広告には反応しなくなっている
発信者の信頼性に強く影響を受ける
これらの背景を理解することで、Z世代に届けるべき“新しいコミュニケーションの形”が見えてきます。
広告疲れと広告を見抜くリテラシーの進化
Z世代は、YouTubeやInstagram、TikTokなどのSNSを中心に生活しており、日常的に数多くの広告やPR投稿に触れています。この環境下で育った彼らは、広告の「演出」や「ステルス性」を高確率で見抜くスキルを自然と身につけています。
さらに2023年10月1日から消費者庁はステルスマーケティングを不当表示として禁止し、2024年6月には初の行政処分が実施。広告であることを隠す行為は、信頼失墜に直結します。(出典:消費者庁)
一方通行のメッセージが嫌われる
Z世代は“対話”を前提とした情報の受け取り方をします。企業が一方的に押し付けるメッセージには関心を示さず、自分も参加できる・巻き込まれる体験にこそ価値を見出します。
総務省の令和5年度調査では、Z世代のSNS利用率は90%超。双方向コミュニケーションの中で得た「自然な声」を信頼し、それが購買につながっています。(出典:総務省)
「誰が言っているか」が信用の決め手
Z世代は「何を言っているか」よりも「誰が言っているか」を重視します。企業広告よりも、友人、SNSインフルエンサー、リアルな使用者の声に耳を傾ける傾向があります。
LINEリサーチ(2025年3月調査)では、Z世代にとって“信頼できる人”からの情報が最重要。ゲームやミーム文化への関心も高く、既存のPR手法では響きにくい傾向があります。(出典:LINEリサーチ)
データで見る広告不信の実態
Z世代にとって、広告はもはや「情報」ではなく「ノイズ」になりつつあります。
広告に対する即時的な拒否反応も顕著です。僕と私と株式会社の調査では「SNSに購買行動を促されたことがある」と回答したZ世代が30.2%いたのに対し、「広告っぽさ」のある投稿を見たとき、「購買意欲が高まる」と答えたのはわずか14.6%にとどまり、逆に「購入意欲が少し下がる」「購入意欲が完全になくなる」と答えたのは43.4%にも及びました。
(出典:僕と私と株式会社Z世代の4割が“広告っぽさ”が強い広告は「購買意欲が下がる」と回答。SNS広告について大調査! )
こうした実態は、企業がZ世代に向けて広告を発信する際、従来型の“押しつけ型メッセージ”ではなく、「自然な流れ」「信頼できる発信者」「共感できる世界観」によるアプローチが求められていることを示唆しています。
成功事例|広告ではなく共感で響いた企業たち
Z世代に響いたマーケティング成功事例には、いずれも「企業が語る広告」ではなく、「ユーザー自身が語りたくなる体験設計」という共通点があります。以下に、3つの企業の事例を紹介します。
SHEIN|インフルエンサー起用で広告感を薄め「リアル体験」を“自然共有”
SHEIN
ファッションとライフスタイルのグローバルECブランドで世界150か国以上でサービスを展開しています。日本でもZ世代を中心に利用者の多いサービスとなっています。
SHEINは2023年以降、日本でもフォロワー数千~数万人のナノ・マイクロインフルエンサーを戦略的に起用。
Campaign Japanによれば、「ナノインフルエンサーは非常に親しみやすい存在」として高いエンゲージメントが出るほか、コンバージョン率は約22%に達するという。(出典:campaign japan )
また、東洋経済オンラインの記事では、SHEINが「中小インフルエンサー」を大量起用し、自然なレビュー動画をSNS上に広げていると報告されています(出典:東洋経済ONLINE)
#Sheinhaul のようなUGCが生まれる文化を活かし、「広告らしさ」ではなく「ファッション体験」を自然と伝播させる設計が功を奏しています。
Oisix|ネガティブも含む正直レビューが“本音共感”を生む
Oisix
選りすぐりの食材やミールキット・惣菜など、毎週1500商品以上を販売する宅配サービスです。有機野菜や特別栽培農産物、無添加の加工食品など、安全性に配慮した食材が特徴です。
Oisixは“試してレビュー”のUGCをSNS中心に展開し、2023年夏にはインフルエンサー数を減らしながらも質の深い投稿を維持したと同社広報が明かしています。(出典:Oisix ra daichi)
Shopifyブログでも、同社が#Oisix ハッシュタグを活用し、ユーザー投稿を再シェアする手法で新規顧客獲得に成功していると報告しています。(出典:Shopify)
加えて、FeedForce提供のショート動画制作サービスでは、UGCライクな縦型動画を14日以内に制作し、SNS導線を整備 。
「味の感覚や量感などリアルな体験を語る小さな声が逆に信頼になる」という設計がZ世代に響きました。
Adobe × UUUM|使う人が語り手=共創が“自己効力感”を引き出す
Adobe
画像編集ソフトのPhotoshopや、ベクターグラフィックソフトのIllustratorなど、クリエイティブ関連のソフトウェアを開発・販売するアメリカの企業です。
UUUM
日本のマルチチャンネルネットワーク(MCN)、YouTuber事務所、並びにレコード会社です。HIKAKINやはじめしゃちょーの影響もあり、Z世代には「YouTuber事務所」としての認知が広いです。
AdobeはUUUMと2022年から共同でコンテストや記念動画を展開し、2023年6月にも10周年MVを公開 。
UUUM noteでも、2023年以降「従来とは違う共創的な取り組み」として注力されていると紹介されています。(出典:UUUM)
UUUM所属のHIKAKIN、はじめしゃちょーら39名がPremiere Proを使って編集し、プロではなく“同世代クリエイター”として語る設計が生きています。(出典:UUUM)
結果は「プロっぽさ」への抵抗感を崩し、「自分にもできそう」という自己効力感を引き出す効果に成功。それがブランドの敷居を下げ、Z世代に訴求しました。
Z世代に届くためのアプローチ設計
Z世代に響くマーケティングの本質は「企業が語る」のではなく「ユーザーが語りたくなる」設計にあります。
重要なのは以下の3点です。
共感できるストーリーや文脈の提供
たとえば、Z世代が日常的に感じている課題や価値観(例:環境意識、自己表現、多様性)と親和性のあるストーリーをキャンペーンの軸にすることで、「私のためのブランドだ」と感じてもらえる土台ができます。
UGC(ユーザー生成コンテンツ)を促進する仕掛け
ユーザーが商品を使用している様子を投稿したくなるよう、SNS上で使いやすいテンプレートやハッシュタグ(#私だけのカスタムボトル など)を提供します。ある化粧品ブランドでは、パッケージに名前を入れられるキャンペーンを実施し、自然と“見せたくなる”投稿が拡散されました。
LINEやSNSでの紹介導線を整備し、“語るきっかけ”を用意すること
実際に、ある美容クリニックでは紹介導線を整え、紹介キャンペーンを行ったことで、月次契約数200件を達成し、紹介経由での年間売上1.8億円に届く成果を出しています。美容クリニックなどは特に、友人からの紹介で契約する人が多く、信頼性の高い情報源として機能しています。
Harvard Business Reviewによれば、紹介経由の顧客は平均で25%長期的にリピートする傾向がありユーザーが語りたくなる紹介設計は信頼構築にも有効です。
トピック: 紹介の基本, マーケティングノウハウ
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