2022.10.25 紹介キャンペーン事例
大手競合だらけのビール市場でなぜヤッホーブルーイングは勝ち残っているのか?|ファンマーケティング事例を紹介
ヤッホーブルーイングのファンマーケティングはなぜ注目されるのか?
ヤッホーブルーイングとは、近年注目されているクラフトビール製造を専門とするメーカーです。「水曜日のネコ」や「よなよなエール」、「インドの青鬼」を製造、販売しており、これらの商品を手にとって実際に飲んだことがある方も多いのではないでしょうか。
ビール会社というと、アサヒビールやKIRINのような大手に注目がいきがちです。それでも、決して大手とは呼べないヤッホーブルーイングはファンマーケティングを活用して、着実に売り上げを伸ばしており、近年注目を集めています。
ヤッホーブルーイングはどのようなファンマーケティングを行って、売上を上げているのか、その実践例をみていきましょう。
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ヤッホーブルーイングがファンマーケティングに力を入れる理由
画像引用元:ヤッホーブルーイング公式サイト https://yohobrewing.com/
ヤッホーブルーイングが創業された1997年当時は、地ビールブームで順調に売り上げが向上。しかしブームが終わると売上も下がってしまいました。そのような中、同社が「復活」を果たした経緯に「ファン」の存在があったといいます。
ファンが周りの人に声をかけ、ヤッホーブルーイングの存在をアピールしたことで、ヤッホーブルーイングは徐々に売上を改善していきました。こうして「ファン」の心を掴み、自然と紹介してくれる仕組みを作ることが同社の方針になっていったのです。
参考記事:https://news.mynavi.jp/techplus/article/20210924-1979574/
「ファン」を増やしたことで起きた変化
では実際にファンマーケティングを行ってから、どのような変化が起きたのでしょうか。
ヤッホーブルーイングのラボ長・佐藤潤氏は下記のように仰っています。
「上位10%くらいのファン層が売り上げの約60%を支えてくださっています。また、事業を拡大する際には新規の利用者との出会いも重要であり、ファン層の口コミから新規顧客が増えるアプローチがあります。この2つの視点から、当社ではファン層を大切にしています。ファンの声を理解するために、定期的に顧客アンケートを実施していて、ブランドロイヤリティを定量的に測るようにしています」
引用元:https://news.mynavi.jp/techplus/article/20210924-1979574/
佐藤氏の発言にもあるように、ファンマーケティングを強化することで見込める効果は2つあります。
①ファンによるリピート率、継続購入率向上によるLTVの向上
②ファンからのクチコミによる新規獲得数の向上
特にヤッホーブルーイングは仕組みを整えるだけではなく、現在のファンのニーズや不満を顧客アンケートで随時調査をすることで、定点観測しサービス改善やファンマーケティング施策に役立てているようです。
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ファンマーケティング事例1:商品の「キャラクター化」
ヤッホーブルーイングの商品といえば「水曜日のネコ」や「よなよなエール」が有名。このほかにも、ヤッホーブルーイングの商品にはどれも特徴的な名前やパッケージが印象的です。
各商品のネーミングはいずれも、味や香りの特徴から結び付けられたものです。このような覚えやすく特徴のある名前とキャラクター付けによって、ファンがつきやすい構造になっていると言えるでしょう。
名前やパッケージだけではありません。一つ一つのビールには、オススメの飲み方や、ぴったりのおつまみが提案されています。
例えば、「よなよなエール」であれば下記のような内容が掲載されています。
・透明なグラスに13度くらいの温度で注ぐとちょうどよい
・おすすめのおつまみはテリヤキチキンやチェダーチーズ
こうした「キャラ付け」により、ヤッホーブルーイングの商品には、それぞれ特定の「ファン」がつきやすくなります。温度やおつまみの情報を見て、リピート購入や別商品の購買も促されるでしょう。また、自分以外の人にヤッホーブルーイングの商品をオススメするときも、これらの情報が参考になります。
ファンマーケティング事例2:ファン心理をつかむ商品展開
関連グッズの展開
ヤッホーブルーイングはビールの生産のみに留まらず、自社関連グッズも販売しています。
例えば、自社のビールをおいしく飲んでもらうための、「よなよなエール専用グラス」をはじめとした各ビールの専用グラスが代表例です。
ビールの飲み口が最適になるような形や、色を楽しむことができるような高い透明度、さらには1缶がちょうど入るようなサイズ設計は、まさに商品のために作られたこだわりの製品。クチコミを見ると「非常持ち出し袋(防災避難袋)の中にも入れてます」など愛着度の高いファンに愛されているグッズのようです。
商品体験を向上したり、ブランドへの親近感を向上したりするうえで、メイン商品以外の商品設計もポイントになってきます。
参考:https://yonasato.com/ec/product/original_glass01_2
サブスクリプションサービス「ひらけ!よなよな月の生活」
よなよな月の生活について:https://yonasato.com/ec/nenkan_beer/
ヤッホーブルーイングは、サブスクリプションサービス(サブスク)として「ひらけ!よなよな月の生活」を展開しており、ユーザは好みのビールを毎月選択して注文できます。
いつも飲むビールはもちろんのこと、中には月ごとに替わるご当地ビールや限定ビールもあります。こうしたサブスクサービスだからこそチャレンジしてみる、という方もいるでしょう。新しい商品と出会い、新たなリピート購入に繋がる効果も期待できそうです。
定期的に家に届くことで自分だけではなく、友人がふと遊びに来たときなど人に勧めやすいというのもポイントです。
毎月届く定期便には会員特典として、製造秘話や様々な情報が満載の会報誌や、ビールに合うレシピが同封されています。会員限定の新作商品や限定品の先行販売サービス、イベントの案内などもあります。
サブスクサービスを受けているからこそのプラスαの情報やサービスは、商品理解やファン心理の向上を図る上で重要な仕掛けです。
10年越しの“予約”商品「約束のよなよなエール」
約束のよなよなエール公式ページ:https://yonayonaale.com/yakusoku-yonayonaale/
「約束のよなよなエール」は、2032年、2042年(企画から10年後、20年後)に販売される予定の特別商品です。
ただしこの商品はECサイトから予約するわけではありません。
サイトの記載にならえば、「大切な誰かと未来の約束をすること」が予約になります。
本企画では、10年〜20年の約束を保存するための「よなよなタイムカプセル缶」が限定2000名に届けられました。
このタイムカプセル缶、または、2023年8月17日までのツイートを保存しておき、10年後、20年後の商品発売時に提示すると、商品を優先的に購入することができます。
本企画は、ユニークな予約方法とコンセプトで、顧客の人生や体験に自社商品を深く関与させることに成功しています。
商品を売るのではなく、商品を通した顧客自身の体験を提供する、という考え方です。
ファンマーケティング事例3:ファン向けイベント
ヤッホーブルーイングはファン向けに様々なイベントを開催しています。
同社が特に重要視しているのが、「顧客満足度」です。
ヤッホーブルーイングはイベントを開催するたびに毎回アンケートをとり、「非常に満足」や「満足」等の7段階で評価しているそうです。そして、その中でも特に一番上の評価である「非常に満足」を重視し、この項目の向上を目指しています。
一見すると「満足」以上であれば問題なさそうですが、「非常に満足」という最も高い評価を目指すことによって、ファンの満足度を徹底的に高めることを目指していると言えます。
イベントの内容ではファン同士の交友なども重視されており、ファンコミュニティの形成にも役立っていると言えるでしょう。
以下に、ヤッホーブルーイングの実際のファンイベントを紹介します。
参考:https://www.seohacks.net/blog/8711/
イベント事例1:工場見学ツアー
ヤッホーブルーイングは、ビール醸造所の見学ツアーを定期的に実施しています(※新型コロナウィルス等の影響で現在は中止)。
見学ツアーでは原材料の説明を作り手から受け、ビールの製造過程を実際に見学できるだけでなく、テイスティングのコツを教わりながら数種類のビールを実際に味わうこともできます。
ファンとしては、実際に製造過程から直接目で見て、作り手から普段は知ることもできないようなお話まで聞けるということもあり、ヤッホーブルーイングの商品についてより深い知識を身につけることができる...と好評を集めています。
参考:https://yonasato.com/event/brewery/
イベント事例2:オフラインイベント「超宴」
超宴とは、ビール片手に非日常を味わう「大人の文化祭」がテーマの、ヤッホーブルーイング主催のビールイベントです。
ワークショップや料理、また限定ビールに加え、音楽の生演奏や限定グッズの販売があります。リピーターも多く、また満足度も非常に高いイベントとして定評があります。
「超宴」は、ヤッホーブルーイングのファン同士で交流をする機会であるだけでなく、企業自体が実際にファンと意見を交換する場でもあります。実はこのイベント、実際には赤字運営とのこと。それでもファンのロイヤルティを高めるための投資とみなし、イベントを実施しているのです。
参考:https://yonasato.com/event/brewery/
超宴について:https://yohobrewing.com/cho_utage2017aki/
イベント3:オンラインイベント
よなよな月の道楽座:https://yonasato.com/event_tsukinodorakuza_nomikurabe3
新型コロナウィルスの影響で大規模オフラインイベントを開催しにくくなった昨今ですが、ヤッホーブルーイングはオンラインでもイベントを開催しています。
例えばオンラインイベント「よなよな月の道楽座」では、ヤッホーブルーイングの様々なビールの情報が紹介され、おすすめのおつまみやビールの情報を得ることができるだけでなく、ファン同士の交流も楽しめます。
「BAR恥さらし」は、自分の「恥」体験を共有し合うオンラインイベントです。「人と違う」ことを受け入れる、というよなよなエール自体の商品コンセプトから生まれた企画です。
ポイントは、自身でビールを用意するだけで気軽に参加できること。ビールをきっかけに人とのちょっとしたつながりを見いだす「場づくり」「縁づくり」の演出は、ブランド体験を最大化するための優れた仕掛けだと言えるでしょう。
BAR恥さらし:https://yonayonaale.com/yonayonapeace2021/
まとめ:ファンマーケティング最大のポイントは「顧客体験」を中心に考えること
以上、ヤッホーブルーイングが行なってきたファンマーケティングの実践例を紹介してきました。
ファンマーケティングの基本理念である、「ファンを喜ばせ熱狂させる」をモットーに、様々な施策がなされています。商品名が狙いをもってつけられ、覚えやすく、また愛着をもってもらいやすい特徴を活かして、情報を多く発信しながらファンを拡大しているとも言えるでしょう。工場見学や飲み比べイベントなど、既存のファンに対して情報を発信し商品の良さをさらに伝えるということが、ヤッホーブルーイングのファンマーケティングの特筆すべき点です。
また、ファン同士の交流を深め、実際にファンの意見を聞くことのできるオフラインイベントなどはファンコミュニティの醸成に一役買っています。このようにして、ファンの輪を広げ、またファンが伝道師の役割を担いながら新たなファンを連れてくるという理想的な構図が見て取れます。
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