2025.06.27 紹介の基本 マーケティングノウハウ
Z世代とインフルエンサーの本当の関係性とは? ─ フォロワー数より「共感」が信用される時代へ

企業が発信する情報や広告が「届かない」と言われるZ世代。彼らは、一体何を信じて購買行動を起こしているのでしょうか? 多くの企業が注目する「インフルエンサー」がZ世代に与える影響は大きいものの、そこには単なる「広告の代替」では語れない、複雑な心理が隠されています。
この記事では、Z世代がなぜインフルエンサーの声に耳を傾けるのかを深掘りし、さらにインフルエンサーさえも超える“最も信頼される存在”へと繋がる、「紹介施策(リファラルマーケティング)」の可能性について解説します。
過去のZ世代マーケティング記事はこちら
>>『Z世代マーケティングの新常識:広告が刺さらない3つの理由と共感の設計術』
>>『Z世代はなぜ流行に飛びつく?SNS時代の“共感消費”の正体』
Z世代は「広告」と「インフルエンサー」をどう見ているか?
Z世代が広告を信用しないという事実は、もはや常識となりつつあります。『Z世代マーケティングの新常識』でも触れたように、彼らは生まれた時からインターネットが存在し、情報過多な世界で育ってきました。そのため、企業発信の広告に対しては強い不信感や、「押し付けがましい」というネガティブな感情を抱きがちです。
一方で、インフルエンサーの言葉には反応する傾向が見られます。これは、彼らがSNSにおける「PR」や「案件」を見抜く能力が非常に高いこととも関連しています。総務省の調査(※1)やマクロミルの調査(※2)でも、Z世代の情報源としてSNSやインフルエンサーが上位に挙げられる一方で、企業やメディアの公式情報は信頼度が低い傾向にあることが示されています。彼らは、広告が意図的に作られたものであることを理解しているため、より「リアル」で「正直」な情報源を求めているのです。
>>『Z世代マーケティングの新常識:広告が刺さらない3つの理由と共感の設計術』を読む
※1:総務省「令和3年版 情報通信白書」
※2:Commerce Pick「Z世代とSNSの影響力:商品認知から購入までのカスタマージャーニー調査結果発表」
Z世代がインフルエンサーに求める「共感」と「リアルな体験」
Z世代がインフルエンサーに信頼を寄せる理由は、単なるフォロワー数ではありません。彼らがインフルエンサーに求めるのは、自分自身の感情や経験と結びつく「共感」であり、「リアルな体験」に基づいた情報です。
Z世代にとっての「共感」
Z世代に響くのは、彼らと共通の体験を持ち、飾らない人柄や自己開示を通じて親近感を感じさせる「共感型インフルエンサー」です。有名人や、いかにも完璧なライフスタイルを送っているインフルエンサーよりも、身近に感じられる「マイクロインフルエンサー」や「ナノインフルエンサー」に共感する傾向が強いのはそのためです。
マイクロインフルエンサー
フォロワー数:約1万人〜10万人程度
マイクロインフルエンサーは、特定のジャンルやニッチな分野に精通しており、その専門性や知識、経験からフォロワーからの高い信頼を得ています。フォロワー数はメガインフルエンサーほど多くありませんが、その分、フォロワーとのコミュニケーションが活発で、コメントや質問への返信なども丁寧に行う傾向があります。
彼らの発信する情報は、単なる宣伝としてではなく、「特定の分野に詳しい友人からのアドバイス」のように受け止められやすく、フォロワーの購買行動に強い影響を与えることができます。費用対効果の面でも優れているため、多くの企業が注目しています。
ナノインフルエンサー
フォロワー数:数千人〜1万人程度
ナノインフルエンサーは、最も一般ユーザーに近い存在と言えます。フォロワー数が少ない分、フォロワーは彼らを「友達」や「身近な知り合い」のような感覚で認識しています。特定の地域情報に詳しかったり、ごく身近なコミュニティ(友人、知人、同じ趣味の仲間など)の中で非常に強い信頼を得ているのが特徴です。
彼らの発信する情報は、商業的な広告というよりも「信頼できる友人からのリアルな口コミ」として受け止められやすく、極めて高いエンゲージメント率と信頼性を持ちます。企業案件をあまり多く受けないため、広告色が付きにくく、その分、正直でリアルな情報として響きやすいという強みがあります。ニッチなターゲット層にピンポイントで、かつ深く影響を与えたい場合に特に効果を発揮します。
より「リアルな体験」を求める
インフルエンサーは、Z世代にとって単なる情報源ではありません。彼らが信頼するのは、専門知識よりも「リアルな体験」です。
ひとつ前のZ世代記事『Z世代はなぜ流行に飛びつく?』で「Z世代の流行は『共感』から生まれる」と述べたように、彼らは自分自身の感情や経験と結びつく情報に強く反応します。インフルエンサーの投稿を見て、「私もそう思った!」「わかる!」といった共感の感情が行動の引き金となります。
このように、インフルエンサーは単に商品を宣伝するだけでなく、その商品やサービスを通じて得られる「体験」を共有し、Z世代の「共感したい」という欲求を満たす媒介者なのです。彼らは、インフルエンサーの投稿に対して、その人の生活や考え方、商品への“態度の一貫性”を重視します。この親近感と一貫性が、Z世代の信頼を勝ち取る鍵となるでしょう。
拡散されるのは「紹介したくなる体験」
インフルエンサーが発信する情報がトレンドの起点となることは少なくありません。しかし、Z世代が情報を拡散する際に重要なのは、単に「誰が紹介したか」という発信源よりも、「なぜ紹介したか」というその背景にある「体験」です。
Z世代の拡散行動は、「体験」→「共感」→「発信」という自然な流れで生まれます。彼らが信頼して拡散したくなるのは、「嘘がない体験」です。例えば、インフルエンサーが心から感動した商品やサービスについて熱量高く語る時、その「リアルな体験」がユーザーに伝わり、「私もその感動を共有したい」「この素晴らしい体験を誰かに教えたい」という気持ちが芽生えます。
Z世代はインフルエンサーが提供する「リアルな体験」を通じて共感し、その共感が「紹介したい」という行動へと結びつくのです。
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インフルエンサー施策の限界とリファラルの可能性
インフルエンサーを活用したマーケティングは、一時的に高い効果を発揮することがあります。インフルエンサーのファン層に対して短期間で情報を届け、認知度や売上を向上させる有効な手段です。
しかし、その効果には限界もあります。
インフルエンサーのフォロワーは常に変化し、インフルエンサー自身の影響力も時間とともに変動します。また、企業がインフルエンサーに依頼する「PR案件」は、Z世代の高い「見抜く力」によって、純粋な推薦ではないと判断されるリスクも常に存在します。つまり、インフルエンサー起点のマーケティングは、継続性や信頼の連鎖を生み出すという点では課題があると言えるでしょう。
Z世代とリファラルの可能性
一方で、Z世代が持つ「自分の好きなものを誰かにすすめたい」という根源的な行動欲求は、リファラルマーケティング(紹介施策)と非常に相性が良いと言えます。
リファラルマーケティングとは、既存顧客が友人や知人に企業の商品やサービスを紹介することで、新規顧客の獲得を目指すマーケティング手法です。Z世代は、自分が本当に良いと思ったものや体験は、友人や家族といった身近な存在に積極的にシェアしたいという気持ちが強い世代です。
このような彼らの行動特性は、信頼性の高い紹介を通じて、新たな顧客へと繋がりやすいという点で、リファラルマーケティングの大きな強みとなります。企業が紹介施策を仕組み化することで、インフルエンサー施策だけでは得られなかった「信頼」と「拡散」の再現性を持ったマーケティングが可能になるのです。
>>『【2025年最新】リファラルマーケティングとは?』を読む
企業は「個の共感」をどう味方につけるか
Z世代の心を動かすのは、「ブランドが一方的に語る広告」ではありません。彼らが強く反応するのは、「誰かが語るストーリー」、つまり「個人のリアルな声」です。
企業は、インフルエンサーマーケティングだけでなく、UGC(ユーザー生成コンテンツ)と紹介施策をかけ合わせることで、エンゲージメントを格段に拡張させることができます。顧客自身が「この体験を誰かに語りたい」「インフルエンサーのように紹介したい」と思えるような、魅力的な「語りたくなる体験」をデザインすることが肝要です。
どのような施策で「紹介」を促すか
顧客自身が「この体験を誰かに語りたい」「インフルエンサーのように紹介したい」と思えるような、魅力的な「語りたくなる体験」をデザインすることが肝要です。具体的には、以下のような施策が考えられます。
独占的な体験や情報提供
紹介したくなるような特別なイベントへの招待、限定商品の先行アクセスなど、紹介することで得られる優越感を演出します。
パーソナライズされた体験
顧客一人ひとりに合わせたカスタマイズや、個別のアドバイスを提供することで、「自分だけの特別な体験」として紹介したくなる動機付けになります。
共感を呼ぶストーリー作り
商品やサービスにまつわる開発秘話、顧客の成功事例など、感情に訴えかけるストーリーを共有することで、Z世代が「私も!」と感じ、紹介へとつながりやすくなります。
インセンティブの設計
紹介者と被紹介者の双方にメリットのあるインセンティブ(割引クーポン、ポイント付与、限定グッズなど)を設定することで、紹介のハードルを下げ、行動を後押しします。ただし、インセンティブが露骨すぎると「広告感」が出てしまうため、バランスが重要です。
UI/UXの工夫で紹介をさらに後押し
Z世代はSNS上での情報共有に慣れ親しんでいるため、紹介のしやすさ、つまりUI/UXの設計も非常に重要です。
シームレスな共有導線
商品ページや利用体験の最後に、SNSのシェアボタンや紹介リンクを分かりやすく配置するなど、スムーズな紹介導線を設けます。
UGC投稿の促進と活用
ハッシュタグキャンペーンを実施したり、UGCを公式アカウントで積極的にリポストしたりすることで、「紹介する=承認される」という体験を提供し、さらなるUGCや紹介を促します。
視覚的に魅力的なコンテンツの提供
シェアされることを前提とした、目を引く画像や動画コンテンツ(例:テンプレート、スタンプなど)をあらかじめ用意しておくことで、ユーザーがクリエイティブに時間をかけずに紹介しやすくなります。
紹介状況の可視化
紹介によって得られた特典や、自分の紹介がどれだけの人に届いたかを可視化することで、ユーザーのモチベーション維持につながります。
Z世代がいちばん信頼しているのは、実は「身近な人の声」だった
インフルエンサーは、Z世代にとって「共感」の強力な起点となり、新しいトレンドや体験への興味を引き出す役割を担っています。しかし、最終的に彼らの行動を最も強く動かすのは、やはり「身近な人の声」です。
Z世代は、広告には懐疑的でありながらも、インフルエンサーには共感を覚えます。そして、その共感の先に、もっとも信頼する友人や家族といった「個人の声」が存在します。この「友人の声」がZ世代にとってどれほど強力な行動動機となるかについては、次回の記事でさらに詳しく解説していきます。
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トピック: 紹介の基本, マーケティングノウハウ
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